【ニューヨーク=村山誠】国際情勢のリスク分析を手がける
米コンサルタント会社「ユーラシア・グループ」は3日、2022年の世界の
「10大リスク」に関する年次報告書を発表した。1位には、中国が新型
コロナの感染封じ込めを目指す「ゼロコロナ政策」に失敗し、世界経済や
各国の政情が不安定化する事態を挙げた。

 報告書は、「先進国ではワクチン接種の推進などによってパンデミック
(大流行)の終息が近付いている」とした一方、「ほとんどの国はより
困難な時期を迎えることになる」と指摘した。

 中国国内の消費の落ち込みやサプライチェーン(供給網)の混乱といった
影響は世界に波及し、経済不安やインフレの加速、格差拡大などに対する
不満が、各地で政情不安を引き起こす恐れがあると警告した。これを
「ノー・ゼロコロナ」と表現した。

 2位としたのは、国家や政府の力が及ばない「巨大IT企業の影響が
強まる世界」のリスクだ。デジタル空間では一握りの巨大IT企業が主役
となり、個人の思考にも影響を与えると指摘。米国では11月の中間選挙を
前に、デジタル空間に誤情報がさらに広がり民主主義への信頼が損なわれると
予測。デジタル分野において米中の緊張が高まるだろうとの懸念を示した。
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 3位には「米中間選挙」を挙げ、トランプ前大統領の2024年米大統領
選への出馬を左右するだけでなく、「歴史的な転換点となる」とした。
民主党のバイデン大統領の支持率が低下する中、野党共和党が議会上下
両院の多数派となる可能性があると分析した。そして民主党と共和党の
どちらが勝っても、「不正選挙だ」との批判合戦となり、混乱や暴動が
起こる恐れがあるとした。

 4位には「中国内政」を挙げた。今年後半の共産党大会で 習近平シー
ジンピン 総書記(国家主席)が異例の3期目政権に踏み出すことが確実視
されており、習政権に対するチェック機能がほとんどないと指摘した。

 5位は「ロシア」で、ウクライナ情勢を巡るプーチン大統領の次の一手に
注目し、米露関係は極めて危険な緊張状態にあるとした。
6位には、核合意の立て直しを巡り、対外強硬姿勢を崩さない「イラン」を選んだ。

 7位には「脱炭素政策とエネルギー政策の衝突」、8位には「世界の力の
空白地帯」、9位には「価値観の衝突に敗れる多国籍企業」、10位には
「トルコ」を挙げた。

 ユーラシア・グループは、国際政治学者イアン・ブレマー氏が社長を務め、
戦争や政情不安が起きる危険性など、地政学的リスクの分析に定評がある。
https://www.yomiuri.co.jp/world/20220103-OYT1T50111/