大阪市内の商業施設の女性トイレに忍び込んだとして、大阪府警は6日、男性として生まれ、自認する性別は女性だとする40代の利用客=大阪府内在住=を建造物侵入の疑いで書類送検した。「男性なので入ったらいけないのは分かっていたが、自分の心は女性で女性トイレを使いたかった」と容疑を認めているという。

 捜査関係者によると、府警は検察に起訴の判断を委ねる「相当処分」の意見を付けた。戸籍上は男性で、女性として生きるトランスジェンダーを訴える人が、トイレ利用で送検されるのは異例とみられる。

 送検容疑は2021年5月29日夕、商業施設の女性トイレに侵入したとしている。施設側から「女性の服を着た男性が女性用トイレを利用している」との相談が府警に複数回寄せられ、警戒中の警察官がトイレで手を洗う様子を確認した。同じフロアには性別を問わず利用できる多目的トイレも設置されていた。

 府警などによると、利用客は調べに「中学生の頃から性の不一致を自覚したが、いくら話しても自分の気持ちは分からないでしょう」と供述。勤務先では男性として働いているが、休日は化粧をして外出し、別の場所でも女性トイレを利用していたと説明しているという。

 ただ、この利用客は心と体の性が一致しない「性同一性障害」の診断書などを持っていない。施設側の相談も踏まえ、府警は利用客が男性としてトイレに入ったと判断したとみられる。

 ジェンダーの問題に詳しい中京大の風間孝教授(社会学)は「トランスジェンダーは多目的トイレを使うなど慎重に行動している人が少なくない。さまざまな葛藤を抱えながら社会生活を送っており、この事件を契機に差別や偏見が広がらないか心配だ」と語った。【古川幸奈、山田毅】

https://mainichi.jp/articles/20220106/k00/00m/040/223000c