0001きつねうどん ★
2022/01/11(火) 11:26:17.59ID:CAP_USER30代、病気にまつわる愚痴
ムンク(画家)
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1863年-1944年。ノルウェーの画家、版画家。『叫び』に代表される独特の絵は、世界中の多くの人に愛されている。ナチスドイツは彼の作品を退廃芸術として没収。晩年、そのドイツがノルウェーを占領していた時期に没している。
病気と死に囲まれた画家の叫び
絵画にはあまり興味がない、という人であっても、「ムンクの『叫び』」といえば、おおよそのイメージがわくのではないだろうか。夕暮れの暗い背景を持つ橋の上で、骸骨のような風貌の人が体をくねらせながら耳をふさぎ、口を大きく開けている。独特の雰囲気のある絵画である。
同じモチーフの作品は、いくつかあるのだが、実はそのうちの一つの絵の左上部分に、鉛筆で薄く
「こんな絵は狂人にしか描けない」
と書きこまれている。これはいったい誰が書きこんだのか、長い間不明であったのだが、2021年、ノルウェーの国立美術館の学芸員らによって、「ムンク自身が書きこんだものだ」という調査結果が発表された。
実は、同作品が一般公開された時、見た人から批判、並びに作者の精神状態を疑問視する声がたくさん上がったという。その声を受けて、ムンクが自分自身で書き込みをしたのではないか、という説が有力視されているのだ。
「この画家は精神状態がおかしいのではないか?」
という声を肯定した愚痴なのだ。
確かにムンクの絵、特に代表作とされるこの『叫び』を見ていると、こちらまでが不安な気持ちにさせられる。
なぜ、ムンクはこのような絵を描いたのだろうか。
ムンクの父は医者で、病院を訪れるのは下層階級の人ばかりだった。患者は、それぞれが病を抱え、死の不安におびえていた。患者だけではない。彼は5歳の時に実の母を結核で失くしている。14歳の時には一つ年上の姉が同じく結核で亡くなっていた。そして、ムンク自身も病弱で、妹の一人はうつ病に苦しんでいた。のちにムンクは
「私のゆりかごを守っていたのは、病気と狂気と死という黒い天使たちだった」
と語っている。幼い頃から病気と狂気と死に囲まれて生きてきたのだ。
そして、彼は『叫び』についてのイメージをこう日記に書き残している。
「友人と二人で道を歩いていた。太陽が沈みかけており、空は血のように赤く染まっていた。私は立ち止まって手すりにもたれた。疲れ果てていた。雲が血や剣のように燃えていた。眼下には青黒いフィヨルドと町。友人は行ってしまったが、私は立ち尽くしていた。そして、大きく果てしない自然の叫びを感じた」
『叫び』とは、絵の人物が叫んでいるのではなく、自然の叫びであり、彼はそれを聞くまいと耳をふさいでいるのだ。病も、死も、成長も、不安も、「自然」の一部である。この絵を見ると、我々も彼の不安を共有できる気がする。
ちなみに、この風景は妹の入院していた精神科病院からの眺めであるという。
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