性感染症である梅毒の患者が群馬県内で増加している。昨年に確認された患者は前年の2倍超となる104人で、現在の調査方法になった1999年以降で最多となった。SNSを通じた出会いが広がり、不特定多数との性交渉が増えたことが一因とみられている。新型コロナウイルス感染拡大の陰で梅毒の増加は目立っていないが、県や専門家は危機感を強めている。

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 「過去の病気だという認識を改める必要がある」。性感染症に詳しい「セントラルクリニック伊勢崎」(伊勢崎市粕川町)の清滝修二院長はこう話す。

 同院には毎年1〜4人程度の患者が訪れていたが、昨年は8人に増え、清滝院長は驚きを隠せない。このうちの3人は、SNSを通じて知り合った人との性交渉が原因だと答え、相手と連絡が取れなくなった人もいた。

 清滝院長によると、梅毒になると発疹や潰瘍が体にできるが、痛みやかゆみを伴わないことが多く、しばらくすると消えてしまう。清滝院長は「治ったと勘違いして再び性交を繰り返してしまう人もいるため、実際にはもっと多くの人が感染しているのではないか」と不安を口にした。避妊具のコンドームでも感染は完全には防げないといい、不特定多数との性交渉をしないことが予防法になる。

 県によると、昨年は県内で男性74人、女性30人の感染が確認された。男性患者を世代別で見ると、30歳代が最多の22人で、20歳代18人、40歳代16人と続いた。女性患者は20歳代の15人が最多で、母親から胎児に感染する先天梅毒も1例あった。県は、感染経路の実態は把握できていないとして、「主婦やOLといった性産業と関わりのない人たちにも感染が広がっている。不特定多数の人との性行為を避けてほしい」(感染症・がん疾病対策課)と呼びかけている。

 県の各保健所は、定期的に性感染症やヒト免疫不全ウイルス(HIV)検査を無料で実施している。電話予約が必要だが名前や住所を明かす必要はなく、採血を行えば1週間程度で結果が判明する。前橋、高崎両市保健所は新型コロナの影響で新規予約を停止している。

  ◆梅毒 =性的な接触で「梅毒トレポネーマ」という病原菌をうつされて感染する。症状の赤い発疹が楊梅(ようばい=ヤマモモ)の実に似ているのが名前の由来。初期は陰部や口など、感染がおきた部位にしこりができたり、股の付け根のリンパ節が腫れたりする。治療せず3か月以上が経過すると、手のひらや足の裏などに赤い発疹がうっすらと出る。早期の薬物治療で治るが、放置すると数年後に脳や心臓に重大な合併症を起こすことがある。

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