1月15日(現地時間)、南太平洋の島国トンガを襲った、海底火山の大規模噴火。これに伴い、気象庁は翌16日未明、北海道から沖縄にかけて津波警報や注意報を発令した。沿岸の自治体を中心に住民の避難指示が出る中、ハンバーグレストラン「びっくりドンキー」の従業員が、代金の支払いよりも利用者の避難誘導を優先したとして、Twitterで賞賛を浴びている。

 運営会社に話を聞くと、この対応の裏には同社が大切にしている店舗運営マニュアルの存在があり、それを適切に順守した店舗従業員の心意気によってなせる業だったことが分かった。

 従業員の対応が注目を集めたのは、Twitterユーザーの投稿がきっかけだった。投稿したのはまな@仙台鷲(@ron_lily0126)さん。避難指示が出た際に「びっくりドンキー多賀城店」(宮城県多賀城市)の店内にいたという。

 まなさんは1月16日深夜、自身のTwitterアカウントで「完食してしまったのにも関わらず食事代金は本日要らないのでと避難指示を優先していました。私達は代金お支払いすると言いましたが、とにかく避難して下さいと人命を優先する従業員さんには頭が下がります。感謝しかありません。また利用してお礼を伝えます」(原文ママ)と投稿した。

 まなさんのツイートには「びっくりドンキーさんの対応は素晴らしい」「正しい判断」「企業の使命感のお手本」「命がなくなったらすべて終わりですもんね。利益ばかり追求することが商売ではない」など賞賛の声が相次いだ。記事執筆時点(1月21日午後5時時点)でツイートは6万9000リツイート、30万9000のいいねを記録している。

 まなさんはその後、店舗に戻り、代金を支払おうとしたものの、それは叶わなかったという。従業員が「会社の決まりで人命優先で代金は受け取れない。伝票も破棄したので本当にお受けできない」と、まなさんの支払いを丁重に断ったためだ。まなさんは「感謝の気持ちを伝えたかった」とツイートした理由を明かし「お礼だけは伝えることができた。また利用したい」としている。

「マニュアルの趣旨を理解し、適切に対応してくれた」
 びっくりドンキーを全国展開するアレフ(札幌市白石区)によると、従業員の対応は店舗の運営マニュアルを順守した対応だったという。同社はマニュアルに大規模災害発生時の対応として「お客さまと自らを含めた従業員の安全確保を最優先にすること」と明記している。

 同店は2011年3月に発生した東日本大震災でも、店舗周辺で大規模な浸水被害を受けていたといい、同社は「当時の経験を生かしてくれたのかもしれない。(従業員が)マニュアルの趣旨を理解し、適切に対応してくれた」と同店舗に対し、感謝を述べた。

 ツイートしたまなさんに対しても「避難指示が出る大変な状況の中、わざわざツイートいただきありがとうございます」と謝意を示した。

 利用者に対して、災害時にどのように対応するかは企業にとって死活問題といえるほど重要な意味を持つ。今回のアレフの対応から企業経営者が学ぶことは少なくないはずだ。

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