0001きつねうどん ★
2022/01/29(土) 17:43:25.84ID:CAP_USER「味は好きだけど、殻をむくのが大変……」
カニを食べるたび、こう思う人は多いだろう。
特に悩ましいのが爪の部分だ。殻が最も硬い部位なので、キッチンばさみで四苦八苦。それでも、なんとしても爪の先まで詰まった身を味わいたい。頑丈な殻に、鋭い爪。どうしてカニはこんなに食べづらいのか—。
その理由は単純、カニ自身が外敵から身体を守るためだ。といっても、「敵」は人間やサメのことではない。
実はカニは、目に見えない「細菌」との闘いを繰り広げているのだ。海や川には、カニの外骨格を構成するキチンという物質を分解する細菌や、たんぱく質をアミノ酸まで分解する細菌など、おびただしい数の細菌がいる。
こうした細菌たちから身を守るために、カニは硬い殻を手に入れた。カニの殻は戦国武将の鎧ではなく、過酷な環境で生き抜くための宇宙服のような存在なのだ。
だが、殻があったとしても油断はできない。細菌は水中では1mlあたり1万個に満たないが、水底には多い時で100万個もいる。水底歩行中に石や岩、貝殻やフジツボの破片にぶつかれば、殻には擦り傷ができる。そこから次々に細菌が侵入し、殻が溶かされて穴が広がる。
人体と同じように、カニの身体でも、傷口ができると血液が固まって「かさぶた」ができる。だが、傷口が大きければ侵入する細菌を防ぎきれず、やがて死に至る。
カニにとって水底を歩くことは、まさに命がけだ。そのため水底に接する爪の殻は特別に厚く、丈夫になった。さらに接地面積が少なくて済むように、爪は細長く、鋭くなっているのだ。
ちなみにカニの脚が長くなったのも、同じ理由だ。上からくる外敵に対応するために、カニは身体の上部を硬い殻で覆った。だが、腹部の殻は硬さが劣るため、危険な水底から最大の弱点であるお腹を遠ざけようと長い脚を手に入れた。
長い脚と鋭い爪。カニたちの進化の歴史を思いながら、あの美味を堪能しよう。(桜)
『週刊現代』2022年1月29日・2月5日号より
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/91757