ロシア国防省は15日、ウクライナ国境に接する西部と南部の両軍管区で一部の部隊が演習を終え、撤収を開始したと発表した。プーチン露大統領は14日、欧米と安全保障問題で交渉を継続するとしたラブロフ外相の提案を了承しており、関連した動きの可能性がある。ただ、全ての部隊を撤収させるのかどうかは明らかにされておらず、緊張緩和につながるかはまだ不透明だ。

 ウクライナ国境付近では昨秋以降、10万人以上のロシア軍部隊が集結し、ウクライナへの軍事侵攻が懸念されており、バイデン米政権は今週中にも侵攻が始まる可能性があるとの見方を示してきた。

 しかし、露国防省の発表によると、西部と南部の軍管区に展開する一部の部隊はすでに列車や車両への装備の積載に着手し、元の駐屯地への移動を始めているという。ロシアのショイグ国防相は14日、プーチン氏に対し「一部の演習はすでに終わり、他の一部も近く終了する」と報告していた。

 また、ラブロフ氏も14日、北大西洋条約機構(NATO)の不拡大などを求めるロシアに対する米欧の回答が「満足いくものではなかった」と改めてプーチン氏に報告。プーチン氏は「(米欧と)重要な問題で合意するチャンスはあるのか」といら立ちも示したが、ラブロフ氏は「チャンスはいつもある」と応じ、「際限なく交渉を続けるべきではないが、現段階では交渉を続け、発展させることを提案する」と述べ、プーチン氏も了承した。

 ロシア軍はウクライナの隣国ベラルーシでも20日まで合同演習を行い、南岸の黒海でも19日まで艦艇などによる演習を続ける予定。タス通信によると、プーチン氏は今週末までにベラルーシのルカシェンコ大統領と会談する予定で、ベラルーシに展開するロシア軍部隊の撤収時期を協議するとみられる。プーチン政権はこれまで演習後の撤収を明言してきたが、米軍などの東欧への増派やウクライナ軍の「挑発行為」への懸念も繰り返し表明しており、米欧やウクライナへの対抗として一部の部隊を残す可能性も指摘されている。

 一方、米国務省のプライス報道官は14日の記者会見で、ラブロフ氏がプーチン氏に交渉継続を提言したことについて「留意している。ただし、緊張緩和に向けた具体的な兆しがこれまで全く見られない」と強調した。「我々は一貫して外交による解決の道を追求している。ロシアにも同様の姿勢を求めているが、そのような状況はまだ見られない」と、警戒感を示した。【モスクワ前谷宏、ワシントン鈴木一生】

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