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足元のわなに気づかずにつるされた餌を食べる鹿=静岡県富士農林事務所提供

 鹿に農作物を食べられる被害を減らそうと、静岡県の富士農林事務所(富士市)が効率的に鹿を捕まえる新技術「竹内式誘引捕獲法」の実証試験を進めている。県によると、2020年度の農作物の鳥獣被害額は県全体で2億9688万円。うち鹿による被害が約4分の1を占めており、農家の頭を悩ませている。【長沢英次】

 県は、ニホンジカの生息密度が高いと推定される伊豆半島や富士山周辺で捕獲に力を入れている。20年度の鹿の捕獲数は両地域で計2万3520頭。推定生息数は計4万3900頭で減少傾向にあるが、新技術が広がれば、さらなる捕獲数増が期待できる。

 竹内式は、(1)餌となる飼料「アルファルファヘイキューブ(AH)」を地面にまいておき、2日ほど鹿に食べさせる(2)AHを小さな穴の開いた透明の袋に入れ、高さ1・2メートルほどの位置になるように針金で木につるし、10日ほど鹿に食べさせて警戒心を解く(3)つるされたAHを食べる際に鹿が前脚を置く場所に「足くくりわな」を仕掛けておき、鹿が踏むとわなにかかる――という手順。

 地面に餌をまいてわなにおびきよせる従来の方法と異なり、餌を高い位置につるすため、鹿の視線が上を向く。このため、地面に埋めたわなに気づかず、かかりやすくなるのが特徴だ。

 また、竹内式は、AHで餌付けされない熊などの他動物を誤って捕まえることが避けられるという。AHを袋に入れることで雨にぬれないほか、わなの数が少なくて済み、効率的に捕獲できるという利点もある。

 県森林・林業研究センター在籍時の19年度に新技術を開発した富士農林事務所の竹内翔主任は「鹿を減らすため、雌を捕らえることが必要。雌にどれほど有効かが課題となる」と話す。センターは、竹内式で鹿がわなにかかる瞬間の動画を投稿サイト「ユーチューブ」で公開。富士農林事務所は、狩猟者を対象に竹内式の勉強会を開くなどして鹿の捕獲を進めたい考えだ。

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