0001きつねうどん ★
2022/03/05(土) 17:34:00.47ID:CAP_USERスギの刺し身(提供写真)
スギという耳慣れない養殖の魚が、注目されている。刺し身はカンパチやヒラマサに似て美味な上、卵から完全養殖できてSDGs(持続可能な開発目標)にも貢献できるため、回転寿司や居酒屋、スーパーで人気を集めているという。
スギはスズキ目スギ科スギ属の魚で暖かい海にすみ、1.5メートル前後まで大きくなる。天然ものは群れをつくらないため大量に取ることが難しく、美味な割にはあまり知られていない存在だった。
そのスギを魚類の養殖、加工、流通を手がける太新が、沖縄の海で事業化に成功。昨年6月から「琉球すぎ」と名付けて出荷を始めた。
筆者は同社が手がける養殖ヒラマサと一緒に試食させてもらったが、味や香りはスギの方が勝っているように感じられた。
「エサの工夫で血合いのきれいな色が長持ちするようになり、味も良くなっています」と、太新の田端新也社長は説明する。刺し身に限らず、煮魚もおすすめだという。
2007年に一度、養殖事業を断念
実は沖縄県産の養殖スギは、今回が2度目の挑戦となる。二十数年前に同社が手がけたときには、一時は年間25万匹の出荷まで成長したが、その後、いけすで魚の病気が蔓延。2007年に一度、スギ養殖事業を断念した。
「当時は法規制の関係で、他魚種のワクチンをスギに接種することができなかった。水深15メートルぐらいの浅い海でしか養殖できなかったことも、魚が丈夫に育たなかった理由のひとつです」(田端氏)
その後の法改正で、他魚種のワクチン接種が可能になった。また地元のマグロ養殖業者の協力もあって、深い海に沈められる沈下式いけすと、直径40メートルの大きないけすをスギ用に使えるようになった。
潮通りが良く水温が安定する深い海に設置されたいけすは、魚の育成に好影響を与える。だがメリットはそれだけではない。
「沖縄は台風の被害が多い。ですが台風の来襲時はいけすを海中に沈めることで、被害を避けることができます」(田端氏)
このようにさまざまな改善を経て、リベンジの「琉球すぎ」は、ようやく出荷にこぎ着けたのだった。
「これからは国内市場だけでなく、海外市場への展開も視野に入れて、出荷を伸ばしていきたい」と、田端氏。
ここで効いてくるのが、稚魚を自然から取ってくるのではなく、卵から完全養殖ができるという特徴だ。
「特に海外の市場ではSDGsにかなった商品なのかが注目される。環境に負荷の少ない完全養殖は、大きなアピールポイントになります」(田端氏)
海底火山噴火による軽石被害の影響で、養殖スギの成育にも影響が出た。そのため今年は6月ごろから出荷が可能になる予定だという。おいしくてSDGsにも貢献できる養殖スギ、ぜひお試しあれ。
(取材・文=五嶋正風)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/302121