急に我慢できないほどの尿意が起こる「尿意切迫感」を主症状とする「過活動膀胱」。他の症状として「頻尿」「夜間頻尿」「尿失禁」が加わる場合がある。

 原因は、脳や脊髄に病気があって排尿をコントロールしている脳の神経に異常が出ている場合と、脳の神経回路とは無関係で原因がはっきりしないものがある。

 いずれにしても膀胱に尿が十分にたまっていないにもかかわらず、膀胱から異常な信号が脳に伝わり、急に尿意に襲われるのだ。

 脳の神経回路に異常がある場合には、その原因疾患の治療が必要になる。神経回路と無関係の場合は、膀胱の老化や炎症、血流障害、自律神経の乱れなどさまざまな要因が関係する。特に男性は前立腺肥大症によって尿道や膀胱が圧迫され、それに伴って過活動膀胱が起こることが多い。

「尿トラブルは自宅で治せる」(東洋経済新報社)の著者で、「永弘クリニック」(埼玉県新座市)の楠山弘之院長が言う。

「前立腺肥大症による尿トラブルは、女性と少し違う点があります。同じ過活動膀胱で尿意切迫感があっても、男性は尿道が長いので、尿失禁になりにくい。また、お腹に力を入れないと尿が出にくくなったり、勢いが弱くなったり、尿が途切れたりします。肥大した前立腺が尿の通りを邪魔するので、それが残尿感になったり、排尿直後にパンツの中に漏れたりするのです」

 ただし、過活動膀胱が起こるのは、前立腺肥大症の初期の段階。前立腺肥大症が進行するにしたがって、「低活動膀胱」になる場合が多い。こうなると、膀胱の収縮力がなくなり、膀胱が小さくならないので尿が押し出せなくなってくるという。

 女性の場合、過活動膀胱の大きな要因になっているのは「骨盤底筋群の筋力低下」。骨盤の底で内臓を支えている骨盤底筋が加齢とともにゆるみ、子宮や膀胱が落ちて下に引っ張られることで神経も引っ張られ、異常な信号を出してしまうのだ。

 これは男性でも骨盤底筋のゆるみで膀胱が下がり、同じことが起こるという。また、膀胱が下がると前立腺肥大症が悪化することも指摘されている。男女ともに骨盤底筋のゆるみを改善することは、過活動膀胱の改善や予防につながるのだ。

 過活動膀胱で泌尿器科を受診すると、薬物療法とともに「膀胱訓練」が勧められる。薬物療法の効果があらわれ、尿意切迫感が軽くなってから行うといいという。

「膀胱は筋肉の袋で、加齢によって血流が悪くなると、膀胱の線維化が起きて硬くなります。膀胱訓練では、排尿を我慢することで膀胱に尿をため、膀胱の筋肉を伸び縮みさせて、大きくしていきます。こうすることでこわばった筋肉が柔軟性を取り戻し、膀胱の容量が少しずつ増えていくのです」

■膀胱訓練のやり方

@膀胱に尿が150ミリリットルほどたまると最初の尿意がある。この時点では、膀胱にまだ余裕があるので、1回目の尿意は無視する。

A最初の尿意は気を紛らわしているうちになくなってくるので、もう少し膀胱に尿がたまるのを待つ。

B2回目の尿意が来たらトイレに行く。

 これを3カ月以上続ける。