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バイラクタルTB2ドローン|Efrem Lukatsky / AP Photo

 ロシア軍相手に善戦するウクライナ勢力だが、その秘密がまたひとつベールを脱いだ。トルコ製の中高度・長時間滞在型ドローン「バイラクタル TB2」を活用し、極めて費用対効果に優れる攻撃を展開している。

◆単独でミサイル車両など3台を破壊
 ドローンは2月27日、ロシアのミサイルの発射車両など計3台を破壊した。攻撃の様子を捉えた動画がツイッターで拡散し、世界で320万回以上再生されている。映像はロシア軍とみられる停車中の車列を上空から捉えたもので、このうち地対空ミサイルの発射システムを兼ねた運搬車両に照準がセットされている。しばしの沈黙を経て、突如この車両が爆発し、周囲の複数の車両を黒煙が包み込む。攻撃の成功を受け、管制局では歓声が上がった。攻撃はまさに一瞬の出来事で、何かが着弾した様子さえ映像からは確認できないほどだ。動画はドローンによる空撮映像を遠隔地の地上管制局で受信し、これをスマートフォンで録画したものとみられる。

https://twitter.com/ArmedForcesUkr/status/1497997019515961347?s=20&;t=LDmaVZZyGtYHXxqNQkiY9g

 バイラクタル TB2はトルコのバイカル社が開発した無人戦闘機で、全幅12メートルというサイズだ。空力特性に優れるブレンデッド・ウィング・ボディを採用し、滞空時間は最大30時間にも達する。尾翼は機動性に優れた逆V字翼となっている。レーザー誘導爆弾4発を搭載でき、動画中の攻撃では地対空ミサイルの発射車両2台と戦車1台を破壊している。

◆際立つ費用対効果
 米タイム誌(3月1日)はこの動画を、「ウクライナのドローンによる、ロシア兵器への破壊的な影響」を物語る映像だとして報じた。類似のドローン攻撃による動画はここ数日、ソーシャルメディアで複数拡散されており、ドローン攻撃の有効性を如実に示している。最大の特徴は、極めて高い費用対効果だ。バイラクタル TB2の購入価格は、1機あたり数百万ドル(数億円)程度だ。これに対し、動画で破壊されたロシアの地対空ミサイルは、1台あたり5000万ドル(約58億円)にも上る。トルコの軍事アナリストは同誌に対し、「(バイラクタルを)戦闘に投入し、昨日(動画の攻撃で)見たような劇的な攻撃を加えることができたなら、突如として消耗戦の勝者となるのです」と語る。

 米フォーチュン誌(3月5日)は、決してMQ-9 リーパー無人攻撃機のような最新型のドローンではないと述べつつも、「それでもその魅力は戦場における、残酷なほどに効果的なコストパフォーマンスにある」「わずか100万ドルの値札がつくとみられるこうした航空機は、ほかのハイテク兵器と比べれば簡単に使い捨てにできる」と述べている。性能も実用十分であり、制御範囲こそ半径150キロと心許ないものの、範囲内であれば丸1日以上滞空しながら最適な攻撃タイミングを狙うことができる。ウクライナ空軍司令部はロシアによる侵攻前、「敵に対する質的な優位をウクライナに与えるものです」と語り、実践に投入可能なバイカル社製ドローンを20台ほど保有していると明かしていた。

◆ロシア防空網の弱点が露呈
 米ナショナル・インタレスト誌(3月4日)は、「こうしたドローン攻撃の成功は、ロシアの防空網の有効性に疑問を投じている」と指摘する。ロシアはS-400移動式・長距離地対空ミサイルに加え、その他の短距離防空システムを大量に稼働させているとみられる。しかし、バイラクタルによる攻撃がいともたやすく成功したことを鑑みれば、進軍中の全部隊をカバーできるほどの防空網を稼働できていない可能性がある。

 また、通常の対空防衛システムは戦闘機などを主に想定しており、小型かつ万一の場合には機体を犠牲にできるドローンの対応は苦手だ。フォーチュン誌は、対ドローンを念頭に置いた多重の防空網が今後発達するにつれ、大型で低速なTB2は前線を退くだろうとみている。しかし、少なくとも現状のロシア軍に対しては、予想以上の十分な効果を発揮しているようだ。

https://newsphere.jp/world-report/20220309-2/
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