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自衛隊はロシアに勝てるのか?

 もしロシアが日本に攻めてきたら、いったいどうなるんだろう──こんな不安を感じながら、ウクライナ侵攻のニュースを見ている日本人は少なくないようだ。

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 時事通信は3月11日、「北方領土でミサイル演習」との記事を配信した。

《インタファクス通信によると、ロシア軍東部軍管区は10日、クリール諸島(北方領土と千島列島)で地対空ミサイル「S300V4」の発射演習を行ったと発表した》

 Twitterには不安の声が投稿された。

《今度は日本? 攻める気か? プーチン火遊び止めよ!!》

《ミサイル演習、北海道の人たちも怖がってると思うのでやめてほしいです》

《やっぱりか……不安しかないよ……》

 当然ながらこれまで防衛省は、ロシアやソ連による本土攻撃をシミュレーションし、迎撃作戦を立案してきた。

 東西冷戦下の緊張は今よりも厳しく、また日本国内では革新勢力が政治的に強い影響力を持っていたため、当時の防衛庁はそうした「防衛計画」を全て極秘扱いにしなければならなかった。

 だが、マスコミの地道な取材で、次第に計画の詳細が報じられた。例えば、読売新聞は1988年2月29日の朝刊に、「“北海道侵攻”は独力撃破 防衛庁検討の極秘資料 陸自近代化を強調」の記事を掲載した。

防衛省のシナリオ
 この記事によると、当時の防衛庁は「ソ連=ロシア侵攻」を次のように予測していたという。

《「北海道有事」の場合、予想される侵攻地点として、〈1〉稚内正面〈2〉日本海側の天塩(てしお)正面〈3〉オホーツク海側の浜頓別(はまとんべつ)、枝幸(えさし)正面――の三地点を「上陸適地」として具体的に挙げ、これに対する迎撃拠点は「音威子府」(おといねっぷ)周辺としている。》

 軍事ジャーナリストが匿名を条件に、自衛隊の「対ロシア作戦」について取材に応じてくれた。

「防衛省はこれまで、ソ連やロシアが日本に侵攻する可能性を、様々なシナリオで検討してきました。例えば、1994年に作成された計画があります。91年にソ連が崩壊し、ボリス・エリツィン(1931〜2007)が新政府の大統領だった時代です。この時、当時の防衛庁は、ソ連崩壊を元にシナリオを立案したのです」

 そのシナリオは、ソ連の崩壊によりロシア国民の不満が増加。政府は“新天地”を求め北海道に侵攻するというものだった。

「当時の弱体化したロシアだと、NATO(北大西洋条約機構)軍に勝てるはずもありません。シナリオでは、東欧諸国で“反ロシア”のデモ行動が激化。ロシアの首脳部は西側への侵攻を諦め、『アメリカから距離の遠い』日本の北海道を狙うというシナリオを立案したのです。北海道を占領して、ロシア国民が戦勝を歓迎。大統領の支持率が上がり、かつての東側諸国への睨みもきかせられるという見立てです。今の状況と照らし合わせても、なかなか興味深いシナリオだと思います」(同・軍事ジャーナリスト)

補給が不得意なロシア
 もちろん、他にも様々なシナリオが立案された。

「ロシアの特殊任務部隊であるスペツナズが青函トンネルを占拠する、というシナリオを検討したこともあります。また、青森県三沢市の航空自衛隊三沢基地が急襲されたら、というシナリオもありました。しかし、北海道が対ロシアの主戦場になるという予測は、常に変わりませんでした」(同・軍事ジャーナリスト)