https://www.moneypost.jp/uploads/2022/03/17/jiji-koizumi-20220317.jpg
小泉進次郎氏の「置き土産」と思われているようだが…(写真/AFP=時事)

「うちのホテルはすでにお客様にフロントで歯ブラシやカミソリを持っていってもらう方式にしましたが、『部屋に歯ブラシがない!』『高いお金を払っているのに、ホテルのサービスがなっていない』とお客様から怒りの声が届いています……」

 こう嘆きの声を上げるのは、都内のあるホテルの従業員だ。コロナ禍で苦境に喘いでいるホテル業界をさらに悩ませているのが、2022年4月から施行される「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(通称:プラスチック資源循環促進法)」だ。

 環境省のホームページによると、海洋プラスチックなどによる環境汚染が世界的問題になっているなか、日本は1人当たりの容器包装廃棄量が世界で2番目に多いという。そこで政府はプラスチック製品の「3R」(リデュース、リユース、リサイクル)を促進し、環境に配慮したバイオマスプラスチックなどの使用を増やすために、「プラスチック資源循環戦略」を策定した。

 この戦略を受けて成立した「プラスチック資源循環促進法」は、飲食店や宿泊業などに対して、消費者に無償で提供するプラスチック製品12種類を減らすことが定められている。ホテル業界で対象になるのはヘアブラシ、くし、カミソリ、シャワーキャップ、歯ブラシの5品目だ。

 そのため、4月からは冒頭のホテルのように多くのホテルがアメニティを客室に置かず、宿泊者にフロントなどで必要な分だけ取ってもらう方式に切り替えることが予想される。

「アパホテル」を運営するアパグループは「アメニティは今まで通り客室に設置いたしますが、4月以降は、各アメニティの製造在庫が終了するタイミングで、バイオマスや再生プラスチックなどの原料に改良したものに順次切り替えていきます」(広報課)と、宿泊者に不満を感じさせないようにアメニティ自体を改良するようだが、こうした取り組みは一部の大手に限られるだろう。

 ホテル業界もどう対応すべきか苦慮しているようだ。某ビジネスホテルチェーンの関係者が語る。

「環境省のホームページを見ても具体的にどれだけの量を減らせばいいかといったことが書かれておらず、罰則も規定されていない“努力目標”なので、どう対応したらいいか苦慮しています。もちろん環境保護やプラスチック削減には賛同しており、減らすためのアクションも考えているが、現状はライバル社の対応を見てから決める予定です」

「進次郎氏の置き土産」ツイートが話題に
 2020年7月から始まった「レジ袋有料化」の前例があるだけに、消費者からも効果を疑問視する声が上がっている。SNS上では〈ほんと無意味〉〈手間が増えただけ〉と批判が相次ぐ。当然、矛先は法案を成立させた政治家に向くことに。同法は2021年6月に成立していて、当時の環境大臣は小泉進次郎氏だ。

 進次郎氏への不満はSNS上で話題になり、〈進次郎が環境大臣やった時の置き土産で4月から全国のホテルは客室に歯ブラシ等のアメニティを置くことが出来なくなります(リサイクル製品以外)〉というツイートは約4万件のリツイートを呼んでいる。

 こうした批判の声が出ていることについて、環境省はどう考えているのか。見解を聞いた。

「極論として伝わってしまっている面もあるかと思いますが、ホテルの部屋にアメニティが置けなくなるというものではなく、事業者ごとにプラスチック資源の使用削減のための目標値を自ら設定していただくという法律です。

 取り組みが見られなかったり、著しく不十分であると認められる場合は、勧告や命令が課される場合がありますが、いきなり課すことは想定しておらず、事業者に “どうなっていますか”とヒアリングから始めることになると思います。なお、今回の法案は『レジ袋有料化』と同様に原田義昭大臣の頃に発案されたもので、小泉進次郎氏の発案ではございません」(環境省リサイクル推進室)

 進次郎氏にはとんだとばっちりだった。

https://www.moneypost.jp/890658