海を拓く新鋭船「平洋」&「光洋」
 海上保安庁には、測量船や航空機などを使用して海の調査を行い、そこで得られた情報を管理・提供する組織として「海洋情報部」が設けられています。同部が手掛ける任務は、日本の海洋権益を確保するために必要なデータの収集や、海上での事故・災害を防止するための調査・観測、船舶の安全航行に必要な海図の製作など多岐にわたっており、島国である日本にとって欠かせない役割を担っています。

 その海洋情報部の海洋調査で使用する測量船の中でも最大級の「平洋」が2022年4月22日、東京ビッグサイト横の岸壁(有明西ふ頭)で一般公開されます。日本最大の国際海事展「Sea Japan」におけるイベントの一環で、最新の調査機器を搭載した測量船を間近に見ることができる非常に珍しい機会です。

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海上保安庁が誇る最大級の測量船「平洋」(深水千翔撮影)。

「平洋」は2020年1月に就役しました。同型船は「光洋」(2021年3月就役)で、2隻とも建造ヤードは三菱重工業下関造船所。所属は海保本庁になります。両船が加わったことにより、外洋での調査を行う大型測量船は「拓洋」(2400総トン)、「昭洋」(3000総トン)と合わせ4隻体制に拡充されました。

「平洋」と「光洋」の船体規模は4000総トンと、従来の測量船と比べて大型化しています。また観測データに影響を与える船体の振動や雑音を防止し、長時間の低速航行能力を持たせるため、海保の船として初めて電気推進システムを搭載したのも特徴です。

豊富な海洋観測機器
「平洋」と「光洋」の推進機には舵とプロペラが一体化し、360度どの方向にも推進力を向けることが可能なアジマススラスターが採用されています。このアジマススラスターを、バウスラスターや自動船位保持装置と組み合わせることで、潮の流れが速く、波のうねりが大きい海域でも、同じ位置に留まり続けることが可能であり、これにより海底地形や地質の精密な調査を行えます。

 長時間にわたって一定の海域を低速で航行しながら実施する水路測量でも、船が自動で位置を調整しながら進むため、測量時に航走する経路(測線)から離れることなく、測量業務が可能だそう。余裕のある大きな船体と、電気推進による静粛性によって、居住性も従来の測量船と比べて向上しています。

運航しながら水深1万mの地形がわかる!?

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測量船「平洋」に搭載された自律型高機能観測装置(ASV)(深水千翔撮影)。

 観測機器は音波ビームと反射エコーのデータ水深を計測するマルチビーム測深機や、海流の流れの強さを計測し、データ化する多層音波流速計などを装備しています。

 マルチビーム測深機は海底に向けて広角に音波を出し、音波の往復時間と水中での音の速度から水深を計測する機器です。船の航跡に沿って、最大約1万1000mの深さの海底地形を明らかにすることができます。