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籠城戦が続いているマリウポリには、東部の親ロシア派地域から続々と援軍が集結してきている

ウクライナ南東部の要衝・マリウポリに最重要局面が訪れている。ロシアは同市に立てこもるウクライナ兵に対し、日本時間の4月17日午後7時を期限に投降を勧告。ゼレンスキー大統領(44)は徹底抗戦を表明し、「ウクライナ軍が全滅すれば停戦交渉を打ち切る」と反発した。

ロシア軍はチェチェン共和国を事実上統治する犯罪組織『カディロフ部隊』を投入。一方、ウクライナ軍は’14年のドンバス戦争で名を揚げた最強部隊『アゾフ大隊』が迎え撃つ。ロシア政治に詳しい筑波学院大学の中村逸郎教授が語る。

「マリウポリにはアゾフ海に面した巨大な港と大規模な冶金・製鉄工場があり、北側にはドネツ炭田もあります。ロシア軍が最重要拠点として狙っている場所です。プーチンは対独戦勝記念日の5月9日までにマリウポリを制圧し、戦勝パレードを行おうとしています。降伏という懐柔案を提示したのは、少しでもスムーズに制圧したいという気持ちのあらわれでしょう。

ウクライナ軍の抵抗が激しく、戦況が停滞すれば、生物兵器、化学兵器、最終的には核兵器までをも使用する可能性が高まります」

兵力差は歴然。ウクライナ軍がかなり劣勢だ。

「マリウポリがあるドネツク州、ルハンシク州を制圧すれば、ロシアが実効支配しているクリミア半島まで陸路で繋がります。さらに、南部にある第三の都市・オデーサまで支配すればウクライナは黒海への出口を失う。停戦交渉で『制圧した地域以外からロシア軍が撤退する』というのを落とし所にするのが狙いでしょう」(国際関係アナリストの北野幸伯氏)

マリウポリが陥落となれば、「かえってウクライナ軍の士気が上がる」と見ているのは、元傭兵で軍事評論家の高部正樹氏である。

「製鉄工場に籠城して最終決戦に臨む兵士たちが投降せず、最後まで戦って全滅した場合、彼らは『祖国のために命を捧げた英雄』になります。マリウポリはウクライナの人々にとって反ロシアの象徴となる。マリウポリ陥落の影響は各地に及びます。現在、第二の都市・ハルキウ近辺が激戦地になっていますが、『マリウポリは全滅するまで戦い抜いた』というニュースを聞けば、自分たちも『絶対にハルキウを死守するんだ』という気持ちになる。戦場の兵士とはそういうものです。ウクライナの士気は全土で上がると思います」

一方、ロシア軍は黒海艦隊旗艦のミサイル巡洋艦である『モスクワ』が対艦ミサイル『ネプチューン』で撃沈されたことで、大ダメージを受け、士気も大幅に下がっている。

「『モスクワ』はロシア軍の精神的支柱でした。『モスクワ』沈没のインパクトは首都陥落に等しい。それくらい、ロシアの軍事力が結集された戦艦でした。兵士の士気が下がるだけでなく、国民の中にも反戦の気運が高まる可能性があります」(前出・中村氏)