【ワシントン=横堀裕也】米国防総省高官は29日、ウクライナ東部ドネツク、ルハンスク(ルガンスク)両州のドンバス地方制圧を目指すロシア軍の軍事作戦について、「計画より遅れている」との分析を示した。ウクライナ軍の激しい抵抗に加え、露軍が「補給部隊と離れないよう慎重に進軍している」ためと指摘した。

 東部では攻勢を強める露軍と、これを阻止しようとするウクライナ軍の激しい戦闘が続く。民間人の犠牲も増え続けており、ウクライナ国営通信によると、29日には少なくとも民間人2人が死亡した。

 米国防総省高官は、露軍はドンバス地方制圧に向け、親露派武装集団が実効支配している地域、東部ハルキウ州、南東部マリウポリから攻勢をかけていると指摘した。

 一方、露国防省は29日、首都キーウ(キエフ)近郊、西部フメリニツキー州、南部オデーサ(オデッサ)州の合わせて3か所で、鉄道の分岐地点にある変電施設をミサイルで破壊したと発表した。

 米国防総省の高官は、こうしたミサイル攻撃の目的について、「ウクライナ軍の補給能力に打撃を与えようとしているようだ」との見方を示した。電力関連の施設を攻撃対象に含めていることについて、「電力を遮断できれば列車も動けなくなると考えている可能性がある」と指摘した。

 ロシアは、米欧がウクライナへの軍事支援を加速させていることに強く反発している。セルゲイ・ラブロフ外相は29日、中東の衛星テレビ局アル・アラビーヤとのインタビューで、米欧の武器供与について「ウクライナ領に運び込まれる武器は全て正当な(攻撃の)標的となる。ウクライナの政権側に渡るからだ」と主張した。

https://www.yomiuri.co.jp/world/20220430-OYT1T50109/