<ソ連崩壊後に凋落の一途をたどってきたロシアに敗戦がとどめを刺し、中国は頼りになる盟友を失うと予測>

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナに送り込んだ部隊は敗北に向かって突き進んでおり、この敗戦がソ連崩壊後の凋落にとどめを刺し、大国ロシアは過去のものとなる──ウクライナの首都キーウ(キエフ)駐在の元中国大使がそう断言した。

この元大使は、2005~2007年にウクライナ駐在中国大使を務めた中央アジア専門家の高玉生。中国社会科学院主催の非公開のオンラインセミナーでの高の発言を、香港メディア・鳳凰衛視が伝えた。

高は習近平(シー・チンピン)主席の前任者である胡錦濤(フー・チンタオ)の下で大使を務め、現在は政府の役職には就いていない。彼の編集済みの発言は5月11日に公開された後数時間で削除された。

だが、10年間中国で勤務した経験を持つ元米外交官のデービッド・カウヒグが中国のニュースを英訳して伝える自身のブログで、高の発言を紹介している。

それによれば高は、ロシアはウクライナやジョージアなどソ連崩壊後に独立した共和国を自国の属国のようにみなし、「領土と主権をたびたび侵害してきた」と述べた。

巨額の戦費を負担しきれず
ウクライナの世論は、かつては親ロ派と親欧米派に真っ二つに分かれていたが、2014年のロシアによるクリミア併合後は親欧米感情が高まったと、高は指摘する。

「さらに今回の侵攻で、ウクライナの状況は一変した。ウクライナの人々は一丸となり、ロシアに抵抗し、国を守ろうとしている」ロシアは皮肉にもウクライナを力ずくで奪おうとして、「完全に失ったようなものだ」。

侵攻後のロシアの戦績に関する高の評価はそれ以上に手厳しい。プーチンとその取り巻きは「軍事、経済、政治、外交、世論、プロパガンダ、情報」の領域で展開される現代のハイブリッド戦争の戦い方がよく分かっていない、というのだ。

「ロシアが電撃作戦に失敗し、短期間で勝利できなかったことが、ロシアの敗北の始まりを告げた」と、高は言う。ロシアには「1日に何百億ドルもの戦費が掛かるハイテク戦争」を続ける財政的余裕はない。

軍事力と経済力ではロシアのほうがはるかに有利なはずだが、ウクライナの抵抗と西側の効果的な支援が国力の差を帳消しにしたと、高は見る。

加えて、ロシアの兵器と軍事的コンセプトがアメリカやNATOと比べ「世代的に遅れている」ことが、ロシア軍の不利をいっそう際立たせている。

「ロシアが最終的に敗北するのは時間の問題だ」と、高は言い切る。

「ソ連崩壊後、ロシアは凋落の一途をたどってきたが」、ロシアの支配層はこの流れを変えられなかった。「西側の経済制裁で、今やこの流れが加速している。制裁はロシア経済の多くの部門を痛めつけている。プーチンの指導下で、ロシアは再生し、経済が活気づいたと言われてきたが、それは嘘だ。ただの幻想にすぎない」

今後、ロシアはクリミアと東部ドンバス地方を死守しようとするだろうし、ウクライナは全ての領土の奪還を目指すと予想されるため、戦闘は「激烈を極める」と、高はみる。