0001きつねうどん ★
2022/05/31(火) 19:36:31.13ID:CAP_USER頭突きで対決するジャコウウシ / Credit:Depositphotos
ボクサーやアメフト選手は、絶えず頭部に衝撃が加わるため、脳損傷のリスクを抱えながら戦っています。
実際、脳損傷が原因で亡くなったり、引退後に麻痺や認知障害を患ったりする人もいるようです。
では、頭突きで戦う動物たちは、同じようなリスクを抱えながら戦っているのでしょうか?
この疑問に答えるため、アメリカ・マウントサイナイ医科大学(Icahn School of Medicine at Mount Sinai)に所属する神経科学者ニコール・アッカーマンズ氏ら研究チームは、ジャコウウシ(学名:Ovibos moschatus)とビックホーン(学名:Ovis canadensis)の脳を直接検証しました。
頭突きする動物は脳損傷から守られているのか?
「外傷性脳損傷(略称:TBI)」は、頭部に衝撃が加わることで起こる脳損傷です。
重症な場合は、認知機能や人格に大きな変化が生じたり、身体が麻痺したりします。
また軽度の外傷性脳損傷を繰り返し受けることで、数年たった後に認知症のような症状の「慢性外傷性脳症(略称:CTE)」を発症する場合もあります。
私たちヒトは、交通事故や過激なスポーツ(ボクシング・アメフト・アイスホッケーなど)によって、これらを患うことが多いと言われています。
ところが「頭突きで戦う動物たちは脳に損傷を負わない」という通説があります。
例えばジャコウウシは、オス同士が頭突きしながら角を突き合わせて激しく争います。
突進時の速度は時速50km以上になることもあるのだとか。
それでも「頭突きする動物の脳は頭突きに耐える特別製であり、損傷しない」と考えらえてきました。
とはいえ、いくつかの研究では、ジャコウウシがボーっとしているなど、外傷性脳損傷の症状が見られるという報告も提出されています。
そこでアッカーマンズ氏ら研究チームは、これまで行われてこなかった頭突き動物の脳の直接検証を行うことにしました。
頭突き動物の脳はどのような状態になっているのでしょうか?
頭突きする動物の脳はやっぱり損傷していた
研究チームは、自然死した野生のジャコウウシ3頭とビッグホーン4頭の脳を薄くスライスし、状態を検査しました。
比較対象として、アルツハイマー病を患っていたヒト患者の脳と、慢性外傷性脳症を患っていたヒト患者の脳も使用されました。
その結果、ジャコウウシの脳には、「リン酸化したタウタンパク質」が特定のパターンで蓄積していると判明。
このパターンは、アルツハイマー病患者や慢性外傷性脳症患者においてしばしば見られる特徴です。
研究チームも、ジャコウウシで見つかったパターンについて、「軽度の外傷性脳損傷、または初期の慢性外傷性脳症を連想させる」と指摘しています。
つまり頭突きで戦う動物ジャコウウシの脳は、やっぱり損傷していたのです。
ただし今回の研究にはいくつもの限界や疑問点があります。
そもそもサンプル数が少なく、同じ頭突き動物であるビッグホーンに脳損傷の兆候がなかった理由も不明なままです。
研究チームは、「ビッグホーンの脳損傷が少ない理由を解明することで、外傷性脳損傷の新しい治療につながるかもしれない」とも考えているようです。
とはいえ現段階で引き出せる教訓は、次のようなものでしょう。
屈強な頭突き動物であっても脳を損傷するのであれば、私たち人間は、頭部への衝撃に対してもっと慎重にならなければいない、というものです。
https://nazology.net/archives/109962