東京・新橋の駅前にある「美々卯」新橋店に来ている。ランチ時はたいていの店が混み合うオフィス街にあって、この店は席の予約ができるし落ち着いた店内でゆっくり話ができ、価格も高すぎない。新橋近辺で働く商社マンの友人に教えてもらって以来、インタビューの際などに使わせてもらっている。

この店で待ち合せたのは、4年前に9歳年下の会社員男性と結婚した森智美さん(仮名、42歳)。若々しく、ちょっと色っぽい雰囲気を漂わせている看護師だ。

「配偶者が年下だと、自分の外見や気持ちも下に引きずられるという生理学的なデータがあるみたいですね」

智美さんは誉められても謙遜したりはしない。一人娘として育ち、若い頃は「欲しいものが手に入るならばほかの女の人にどう思われても平気」な性格だったと振り返る。


おカネで苦労したくない
「とにかく医者と結婚したくて、イケイケモードで恋愛をしていました。医者はお金持ちだし、看護師の私とはお互いの仕事が分かり合えます。いろいろ教えてくれる存在でもあり、あこがれの気持ちもありました」

高所得層の男性と結婚したい、という智美さんの願いはその後も一貫している。かなり露骨な希望だが、成育環境が母子家庭だったことが「おカネで苦労したくない」という気持ちにつながったと智美さんは自己分析している。

ただし、生まれ育った地方都市で結婚相手としての医師を見つけるのは容易ではなかった。彼らはモテすぎるし、上流意識が強いことも少なくないからだ。

「私が勤務していた病院では、若くて独身の医者は10倍ぐらいの人数の看護師たちから狙われていました。たいしてカッコ良くなくても遊びまくっている医者もいます」

それでも智美さんは突き進んだ。婚活サイトで出会った医者のうち、4歳年上の昭雄さん(仮名)を本気で好きになったのだ。医者として優秀ではないことは当時から見抜いていたが、かわいげのある人柄で「ほあんとしたクマさん」みたいな外見をしていたという。智美さんは35歳までの10年間を彼に捧げた。

「もちろん結婚したくて、早く子どもが欲しくて、3回ぐらい強行突破を試みました。結婚式場に連れて行ったり、うちの母親に会わせたり……。でも、そのたびに『ごめん。結婚はできない』と言われてしまいました。彼の家族が反対することが目に見えていたからです」

智美さんによると、医者家系である昭雄さんの家族は「看護師はお手伝いさん」という認識が根強く、息子には開業医などの家柄の娘しか釣り合わないと思っていたようだ。実際、智美さんと別れた後で昭雄さんは上司でもある教授の紹介で開業医の娘とお見合いして、結婚した。

「彼と別れてから気づいたんです。医者以外にもお金持ちはいる、ということに」

行動力と社交性は高い智美さん。40対40の大規模合コンを一緒に企画した経営者、雄太さん(仮名)と意気投合。彼も4歳年上で、離婚歴があるが自他ともに認めるイケメンである。医者や経営者といった人たちと付き合うコツはあるのだろうか。

「彼らの話を聞いてうなずくだけではなく、自分が言いたいことははっきり言うこと、かな。この子は面白い!と思ってもらえることがあります」