ドット柄を背景にした楕円状の“穴”が広がって見える錯視には、錯視運動に加えて瞳孔の拡張が関連していると、オスロ大学のレング博士らが発表しました。

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黒い穴が拡大しているように見える錯視画像(以下、画像はラング博士らの論文「The Eye Pupil Adjusts to Illusorily Expanding Holes」より)

 背景には黒い水玉柄、中央には穴のように黒く塗りつぶされた丸が配置された画像。中央の丸の端は透過していて、背景の柄と中央の丸の境界線があいまいです。眺めていると、中央の黒い部分がまるでトンネルの中を進むように、拡張しているように見えます。

 研究チームが正常な視力を持つ50人の男女を対象に調査したところ、中央の黒い穴が拡大するように感じ取れなかった人は14%でした。また、実験では画像を見ている被験者の眼球運動と瞳孔の無意識的な収縮・拡張を測定していて、黒い穴を見ている被験者は瞳孔が拡張したことが確認されています。主観的な錯視が強いほど、瞳孔の大きさが変化する傾向がありました。

 この「広がる穴」の錯視画像は、脳をだまして、暗い場所を歩いているときに目が光を取り込もうとするときのように、瞳孔が大きくなる反射さえ引き起こすと研究者は述べています。

 なお、色違いの画像で同様に錯視の実感と瞳孔反射を確認したところ、錯視を感じられない被験者は20%に増加しました。黒い穴では瞳孔が拡張しましたが、色付きの場合は瞳孔が収縮したことが確認されています。

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黒以外の7色(青、シアン、緑、マゼンタ、赤、黄、白)で同様の観察を行った

 なお、黒い穴が拡大する錯視を感じない人もいる理由については分かっていません。人間以外の脊椎動物や、タコのようなピント調節が可能な目を持つ無脊椎動物でも同様に錯視が起こるのかは確認されていません。

https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2206/08/news054.html