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映画「パンケーキを毒見する」の取材に応じた河村光庸さん=2021年7月撮影

 映画「新聞記者」(二〇一九年)に代表されるように政治や社会を覆う空気に忖度(そんたく)せず、真っ向から問題に立ち向かう反骨の映画人として知られた河村光庸(みつのぶ)さん。一方で、批判精神だけでなく、「時代を切り取るのが私の映画作り」と、大衆を楽しませるこだわりも強かった。

 昨年の東京五輪開催中に公開された「パンケーキを毒見(どくみ)する」は、菅義偉首相(当時)の政治手法を皮肉たっぷりに笑い飛ばす内容だった。本紙の取材に、迫っていた衆院選を意識し、五輪期間中にあえて公開する意義を強調した。既存のマスコミができないことをやる気骨を示しつつ、「社会全体の問題としてとらえてほしかった」とブラックユーモアやアニメの多用が関心を引くための仕掛けであることを明かした。

 取材では、同作品の公式ツイッターアカウントが一時凍結された騒動や、「宮本から君へ」(一九年)の助成金を巡る日本芸術文化振興会との訴訟にも言及。身を乗り出して話す姿は、一映画人にとどまらない正義感にあふれていた。

 最後に姿を見たのは、昨年末にあったネットフリックス配信のドラマ版「新聞記者」の取材会だった。取材のお礼を兼ねてあいさつすると、丁寧に応じてくれた。主張は激しくても映画プロデューサーという仕事柄、気遣いの人でもあったように見えた。 (藤原哲也)

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 河村光庸さんは十一日に死去、七十二歳。

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