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中国広東省珠海市の上空を飛ぶ水陸両用機「AG600(鯤竜)」の新型機。2022年5月31日撮影。
VCG/VCG via Getty Images

中国の水陸両用機「AG600」の新型機が、5月31日に初飛行を実施した。
AG600は災害対応を目的に開発されたが、水陸両用の性能を持つことから、軍事目的での利用も視野に入っているではとの憶測を呼んでいる。
アメリカ軍も、太平洋地域にさらに重点を置く方針を反映する形で、水陸両用の性能を持つ航空機の開発に向けた検討に入った。
水陸両用の性能を持つ中国の巨大航空機「AG600(鯤竜)」が2022年5月31日、初飛行を実施し、中国南部の広東省にある空港での離着陸に成功した。

世界最大の水陸両用機であるAG600は、最新型では新たな構造を採用し、最大離陸重量もさらに引き上げられた。

本格稼働が可能になれば、AG600は海上能力が重視される太平洋戦域における中国の勢力拡大の一助となるだろう。一方、アメリカ軍も太平洋での作戦行動にさらに重点を置く方針を掲げており、中国と同様の用途を想定した、水陸両用の性能を持つ航空機の開発に向けた検討に入っている。

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珠海市で初飛行に臨む、中国の水陸両用機「AG600」新型機。2022年5月31日撮影。
Xinhua via Getty Images

AG600の開発元である中国航空工業集団(AVIC)によると、20分間にわたる初飛行では、定速での上昇、一定の高度を保ちながらの減速、着陸断念後の上昇体制への移行(ゴーアラウンド)のシミュレーションなど、いくつかの試験が実施されたという。飛行中は、システムは安定し、機体も良好な状態を保っていたと、中国国営の新華社通信は伝えている。

AVICによれば、新型機は消火作業に特化しており、航続距離が長くなったほか、最大離陸重量は60トン、最大積載水量は12トンだという。2023年には実際の消火任務に投入可能な状態になるとされている。

新型機にはほかにも、与圧室、フライ・バイ・ワイヤーを導入した操縦系統、統合アビオニクスに加えて、消火活動に関連するシステムが搭載されていると、別の中国国営メディアCGTNは伝えている。

航空宇宙専門のニュースサイトFlight Globalによると、新型機の最大離陸重量は、初代モデルの53.5トンから増加しているという。さらに同サイトは、胴体上部がより丸みを帯びていることや、ノーズ下の部分がさらに膨らんでいる点など、外観上の変化についても指摘している。

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AVICが開発したAG600の以前のモデル。試験飛行中に撮影。
Xinhua/Li Ziheng/Getty

AVICや中国メディアは災害対応能力をしきりに強調しているものの、その大きさや水陸両用の性能を持つことから、AG600の軍事目的への転用の可能性はこれまでも関心を集めてきた。考えられる用途としては、兵士の捜索救助や、遠方基地への部隊や補給品の輸送などがある。

AG600は、中国が開発中の「大型航空機群」の一翼を担う存在だ。このラインナップのひとつである、長距離航行が可能な大型輸送機「運-20」は、2022年以来、海底火山の噴火で被害に遭ったトンガへの支援物資輸送や、セルビアへの地対空ミサイルの輸出などで中国軍によって使用された。どちらのミッションでも、その飛行距離は5000マイルから6000マイル(約8000kmから9600km)に及んだ。

アメリカのシンクタンク、ランド研究所の国際防衛上席研究員ティモシー・ヒース(Timothy Heath)は、2021年のInsiderとのインタビューで、AG600は「ニッチだが重要な複数の役割」を担っており、「これ以外の手段では到達が難しい地域に」到達することが可能になると指摘していた。

https://www.businessinsider.jp/post-255190