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ロシア軍の攻撃を受けながらも2カ月持ちこたえているウクライナの要衝セベロドネツク/Aris Messinis/AFP/Getty Images

(CNN) ロシア軍がセベロドネツクの街に攻撃を仕掛けてから2カ月近くが経過した。だが圧倒的な兵力にもかかわらず、ロシアはいまだウクライナの決死の抵抗を打破できずにいる――同市に残る守備隊に武器や弾薬を段階的に送り込む供給ラインを断つこともできていない。

かなりの損失を負っているにもかかわらず、ウクライナがセベロドネツクで激しく抵抗していることで、ロシアは兵力を比較的小規模なエリアに集約せざるを得ない状態だ。いまだ支配下に置くことのできないルハンスク州でも、領土の残り10%を制圧するのに手間取っている。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、2月に開始した特別軍事作戦の目標のひとつがウクライナ東部のルハンスク・ドネツク両州の制圧だと宣言した。目下のところ、この作戦はほとんど進展しておらず、ロシアは依然としてドネツク州の大部分を手中に収められていない。

ロシア軍もそれなりの成果を上げている――ロシア国防省は19日、セベロドネツクのすぐ南東に位置する町メテルキノを攻略したと発表した。だが、ロシア軍がリシチャンスクとセベロドネツクという隣接する2都市でウクライナ守備隊を包囲するという目標を達成するには、しばらく時間がかかりそうだ。

機動性と発想に乏しい軍事行動で、ロシア軍は原則的な戦術に打って出て、民間施設の被害を顧みずにありとあらゆるウクライナ陣地に徹底した間接射撃を行っている。

狙いは防衛可能な建物を一切残さないことにある。地上部隊を投入して都市部を制圧するといった動きはあまりなく、あったとしても満足な成果を上げられていない。

この地域で展開するウクライナ特殊部隊が週末に公開した動画では、匿名のウクライナ兵がこう語っている。「向こうは手持ちの弾薬やあらゆるものをすべてぶち込んでいる。我々の陣地だろうと民間地域だろうとお構いなしに、地上からあらゆるものを一掃した後、砲撃を加えて徐々に進軍を始める」

激しい市街戦の中、子ども数十人を含む500人前後の民間人がセベロドネツクのアゾト化学工場に避難している。マリウポリのアゾフスターリ製鉄所とは違って、ここには地下で身を守れる場所がほとんどない。ウクライナ政府関係者によれば、ここにいるのは当初街からの避難を拒んでいた人々で、食料は十分あるものの、激しい戦闘ゆえに工場から退避することはもはや不可能だ。

だがアゾフスターリ製鉄所と同様、アゾト化学工場やその近辺はウクライナの抵抗の要衝となっており、ロシア司令官をいら立たせている。

ワシントンに拠点を置くシンクタンクの戦争研究所(ISW)によれば、「今後ロシア軍の損失はますます増加し、部隊や装備の質の低下に見舞われる公算が大きい。それにより、セベロドネツクでの戦闘が長引く中、他の要衝で攻撃を再開する試みは困難になるだろう」

マリウポリ守備隊に対して10以上の大隊戦術群が投入されたように、セベロドネツクの抵抗の突破にはかなりの労力を要することが証明されつつある。

抵抗の制圧
ウクライナは、この地域のロシア軍にかなりの損失を与えたと主張している――米国とフランスが供与した対戦車兵器や長距離榴弾(りゅうだん)砲など、西側同盟国からの最新装備の功績ともいえる。ウクライナ軍は18日、ロシア第11独立自動車化狙撃連隊が甚大な損失を負い、「兵力回復のために戦闘作戦エリアから撤退した」と主張した。

しかし、ウクライナの供給ラインは絶えず攻撃にさらされ、高速道路に沿ってドネツク州の西からリシチャンスクに物資を届けるのはますます困難になっている。

それでもISWは、「ロシア軍が今後数週間のうちにセベロドネツクを制圧できる可能性が高いが、これほど狭いエリアに手持ちの兵力の大半を集約しなければならないだろう」と推測している。