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室井佑月・作家

 作家・室井佑月氏は、長年にわたり野党を応援してきたが、ここに来て「疲れ」を感じているという。

*  *  *

 正直いって、選挙疲れました。去年、再婚相手の選挙戦を手伝って燃え尽きた、というのではない。

 物書きが権力を批判することは大事なことである。なので、ずっと与党の批判をし(2009年からの民主党政権時代はもちろん民主党に厳しくした)、それは野党を応援することになった。仕事柄、間違っていたとは思っていない。

 けど、疲れた。本当に疲れた。

 6月8日、国会終盤で立憲民主党が二つの不信任決議案を出した。岸田文雄内閣への不信任案と、細田博之衆議院議長への不信任案だ。

 10日付の朝日新聞、「野党、広がる距離」という記事から抜粋する。

「9日午後の衆院本会議で、立憲の泉健太代表が内閣不信任案の趣旨説明に立ち、『国民生活と日本経済を発展させていくため、岸田内閣を継続させてはいけない』と訴えた」

 維新や国民民主は、反対するだろうと感じていたからそれほど驚かなかった。いいや、国民民主にはまだ少しの期待はあったかもしれない。

 しかし、れいわ新選組が「『抵抗してます』感をアピールする季節行事に参加することは、茶番への加担」(党声明)といって本会議を欠席したのは、がっかりだった。

 そりゃあ、内閣不信任案を出したところで、数の力で否決となることはわかっている。

 でも、雨の日でも風の日でも、なんなら大事な用事があっても投票所へいって、野党に票を入れてきた者たちの思いはどうなるのだ。

 じゃあ、今度の参議院選は野党が惨敗しそうだから、野党を応援しているあたしたちもわざわざ投票所へ足を運ばなくてもいいんだな。

 そして、立憲も共産党とは、不信任案の共同提出を避けた。連合への配慮だろう。参議院選まで残りわずかとなって、野党側はまだこんな感じだ。共闘しなければ勝てないとわかっていながら。

 参議院選がいつ行われるかはとうに決まっていたはずで、今までなにをやっていたんだという話だ。情けなくて仕方ない。

 あともう一つ、立憲、社民、共産、れいわを表立って応援しているラディカルフェミに、「夫の性欲処理機」からはじまり、あたしが過去、裸の仕事をしたことで「脱いで性搾取されておっさんに添削してもらって有名人になったことは自慢になるんか」、などと酷いことをいわれつづけている。各党、それを見て見ぬふりだ。

 あたしは仕事先から眉をひそめられても野党を応援してきた。それで得をすることなどなかった。でも、今は馬鹿らしくなって……とそこまでは言い切るのは辛(つら)いので、疲れたという言葉に変えておく。

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

※週刊朝日  2022年7月1日号

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