ベストセラー車「ハンヴィー」の弱点

 アメリカ陸軍および同海兵隊は、それまで使用していた汎用的な軍用車両「ハンヴィー」の後継として、新たに「JLTV」と呼ばれる軍用4駆の運用を2018年に開始しました。米軍車両の代名詞存在にもなっていたハンヴィーから、さらにワイルドさが増したJLTVですが、いったいどんな車両なのでしょうか。

https://contents.trafficnews.jp/image/000/059/500/large_220627_jltv_01.jpg
ハンヴィーの後継として2022年現在、アメリカ軍が導入を進めているオシュコシュ製JLTV装輪装甲車(武若雅哉撮影)。

 そもそもJLTVの前代にあたるハンヴィーは、第2次世界大戦期から使用していたジープ系の軍用4WDに替わる車両として、1985(昭和60)年から配備が始まった車両です。シンプルな車体構造ながら頑丈な造りのハンヴィーは様々な戦場に投入され、多くの派生型も誕生しました。

 ただ、ハンヴィーにも多くの弱点がありました。代表的なもののひとつが乗員の保護性能です。ハンヴィーの基本型には装甲板が取り付けられておらず、部隊からの要望によって装甲板を取り付けた車両も誕生しましたが、地雷などから車体下部を守るには車体の基本設計自体を見直す必要があり、乗員の保護性能を向上させるには限界がありました。特に、アフガニスタンやイラクでの戦闘時にはハンヴィーの脆弱性が露呈し、多くのアメリカ軍将兵が危険な状態に晒されています。

 そこで、アメリカ国防総省は、より高い防御力と生残性を持つ車両の調達に関して2005(平成17)年から検討を開始。翌2006(平成18)年になると、いよいよ本格的なJLTV計画がスタートしたのです。

 計画名にもなったJLTVとは「Joint Light Tactical Vehicle」の略です。日本語で「統合軽戦術車両」と表わされるこのプロジェクトに名乗りを上げたのは、ボーイングとテキストロンによる共同提案、ゼネラル・ダイナミクスとAMゼネラルとの共同提案、ロッキード・マーチンとBAEシステムズ・ランド・アンドアーマメンツによる共同提案など、いずれも複数の企業による共同提案でした。

落選から見事復活、本採用へ
 その後、各社の試作車はトライアル(選考試験)を受けたものの、プロジェクトの予算が増大し、またスケジュールの遅延を問題視されたことなどから、計画はなかなかうまく進まなかったそうです。

 ちなみに、採用に至ったのはオシュコシュ社の案でしたが、同社のプランはこの初期段階の選定で一度却下されています。直接の原因は不明ですが、オシュコシュは共同提案していたノースロップ・グラマンとの提携を解消して、後にJLTVとして採用されるL-ATVを単独で発表。結果的にはこのオシュコシュの試作車が採用されました。

 なぜ、いったんは選定初期で落選したオシュコシュのL-ATVが、採用に至ったのでしょうか。

https://contents.trafficnews.jp/image/000/059/501/large_220627_jltv_02.jpg
静岡県沼津市の海岸に上陸したJLTV。一番手前の車両は車体上部に対戦車ミサイルを搭載している(武若雅哉撮影)。