突然ですが、皆さんは「顔面セーフ」という言葉を覚えているでしょうか? すぐにピンときたという方も多いかもしれませんが、小学生のころ夢中になって遊んだドッジボールの用語です。

 そもそもドッジボールとは、2つのチームに分かれて、相手の体にボールを当てる競技のことを指します。ルールはいたってシンプル。ボールを当てられた人はコートの外に出て、コート内にいる人を段々と減らしていくというもの。

 ただし、当たったのが顔面だった場合にのみ、コートの外に出ていかなくても良いという特別ルール、つまり「顔面セーフ」が適用されます。

 故意にしろわざとでないにしろ、「顔面に当たると危ないから、やったらあかん!」と生まれたルールで、野球で言うところの「デッドボール」みたいなものですね。しかし、顔面セーフって、あまりにも露骨なネーミングですよね(笑)。

 ただよくよく考えてみると、ドッジボールは小学生くらいの子どもたちの遊び。思い返してみると、どれもこれも適当に付けられたような名称ばかりでした。

 たとえば、「横目投げ」または「よそ見投げ」。普通であれば投げたい方向を見ながら投げますが、これはまったく違うところを見ながら投げて、相手を驚かせる投法を指します。

 普段は上から振りかぶって投げているのを、突然横から投げてフェイントをかける「円盤投げ」または「UFO投げ」なんていう投げ方もあります。

 子どもたちのキャッチーなネーミングセンスが光るのは、投法だけではありません。

 体を横に向けた状態で、お腹をへこませてボールをよける「くの字よけ」。コミカルなこのポージングは、見覚えのある方も多いのではないでしょうか。

 さらにダイナミックなのが、足を開きながらジャンプをして回避する「パージャンプ」。この技は、低い位置に飛んできたボールをよける際に繰り出されます。

 振り返ってみた通り、投げ方や逃げ方の名前はどれもキャッチーなものばかり。そのなかでも、救済措置的な特別ルール「顔面セーフ」のストレートすぎるほどの響きは、大人になった今もなお、なぜだかとても思い出深いんです……。

 ふと思ったのですが、「顔面セーフ」という言葉は現在でも使われているのでしょうか?

 兵庫県ドッジボール協会に問い合わせてみたところ、やはり競技ドッジボールの世界では「顔面セーフ」とはいわないのだそう。

 相手を狙って投げることを「アタック」といい、そのボールが顔や頭に当たるということで「ヘッドアタック」というそうです。

 続いて、小学生たちにドッジボールで顔に当たることを、何と言うの?とたずねてみたところ……。

「顔面セーフ! 顔面セーフ!」と、聞きなじみのある言葉が返ってきました。

 今の子どもたちも「顔面セーフ」って言うのですね、それを聞いて、なんだかうれしくなりました…が、その反面(顔面だけに)なぜ「顔面セーフ」だけ変に覚えているのか……。思い出しました!

 私が小学生だったころ、ボールが顔面に当たったにもかかわらず、一体どういうわけか、顔には当たってないとジャッジされ、セーフにはならずチームが負けて試合は終了……。

 顔がジンジンと痛み、泣きそうになりながらも一生懸命にこらえて、それでも心にしまったあの言葉。今なら、ビデオ判定にチャレンジしたいくらいの、トラウマ級の出来事。

「あれ! 顔面セーフやったやん!」

(『バズろぅ!』ラジオパーソライター・わきたかし)

https://jocr.jp/raditopi/2022/07/06/439295/