中国不動産「34億戸大量在庫問題」がヤバすぎる!
中国では不動産バブル崩壊に歯止めをかけようと、昨年から一転、不動産市場規制の緩和に動いている。

一方で、物理的にバブルを崩壊させないために、不動産価格の大きな変動を禁止する値下げ禁止令も相次いでいる。

不動産価格は下げさせない、だが不動産在庫は減らせ、という市場メカニズムを無視した共産党の矛盾する方針の中で、スイカや小麦やニンニクで支払いできる不動産を売り出す不動産企業が登場したり、預金は十分があるのに家を買わない市民を「悪意で家を購入しない人物」として圧力をかけたり、親の老後資金で若者に不動産を買わせることを奨励したりと、支離滅裂な政策が氾濫している。

こんなことで、果たして、中国バブル崩壊は回避できるのか。

中国の不動産業界は、いま空前の不動産在庫余りだ。

2006年ごろから、中国では必要戸数と言われる住宅数のおよそ2~3倍の数の不動産を建設し続けてきており、人口14億人の中国で「34億人分居住可能」という都市開発を行ってきた。

このことから2016年に習近平は「脱住宅在庫あまり」を経済政策の重点の一つとして政策を打ち出しているのだが、その流れから不動産企業側の開発プロジェクトに歯止めをかけるバブル圧縮政策を次々打ち出した。

「値下げをするな」大号令が始まった
だが、それによって引き起こされた不動産企業のデフォルトドミノが、中国経済を直撃。すでに銀行のシステミックリスクを引き起こしはじめている。

各地で起きている「銀行から預金が引き出せない」問題は、技術上の問題、あるいは新型コロナ予防といった建前の理由だけでなく、銀行の準備金が深刻に不足しているからではないかとみられている。

こうした状況を受けて、中国は今年から不動産産業に対する規制を大幅に緩和し、不動産市場回復に向けた大号令を出している。

同時に不動産価格の値崩れを物理的に防ぐために、値下制限令が地方政府から出されている。

たとえば広東省中山市は商品住宅価格を4日から申告制にして、3ヵ月の間、その価格を5%以上下げてはならないこととした。また、実際の販売価格は、その申告価格の上下15%を超えてはならないとした。

かつて、不動産価格がもっとも炎上したホットランドの異名をもつ福建省平潭市では、不動産価格一平方メートルにつき2万元割引で在庫をさばいているところだが、6月にやはり、値下げ制限令が出された。

それぞれの不動産開発企業が商業不動産を販売するとき、実際の販売価格は、予定販売価格の上下15%を超えてはならない、としたのだった。

現場はパニック!
これは5月の国務院常務委員会議で李克強が不動産価格の安定を強く打ち出し、「不動産市場の安定的発展」を指示したことを受けての措置だ。

不動産の利益率は銀行利息、付加価値税などを含めても17%、純利益は10%未満で、一般に初期設定価格より15%値下げすれば、企業の「造血作用」は失われ倒産することになる。

不動産企業を倒産させず、不動産価格を安定させるためには、物理的な規制で市場をコントロールしよう、という共産党的な発想だ。

だが、不動産が市場メカニズムによって、適切な価格まで引き下げられる作用を封じるわけだから、この値下げ制限令では「脱在庫あまり」の目標が達成できない。「値下制限」と「脱在庫あまり」という矛盾した二つの政策を課せれた現場は、パニック状態に陥っているわけだ。後編記事『中国で「売れ残り不動産を、なぜか“ニンニク”や“スイカ”と物々交換」へ…! 中国経済「大崩壊」のヤバすぎる現場』では、そんな中国不動産市場でいま起きている「おかしな事態」についてレポートしよう。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/97387