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2022/07/23(土) 23:11:32.04ID:fSJ3J7bv安倍晋三元首相が凶弾に倒れた瞬間の映像を今もテレビで目にする。インターネット交流サイト(SNS)上には、現場に居合わせた人がスマートフォンで撮影した動画もアップされており、何度でも視聴することができる。
テロや戦争、災害などの報道は「惨事報道」と呼ばれるが、惨事報道におけるテレビ局の対応で思い出すのは2001年9月11日、米ニューヨークで起きた同時多発テロ。
テロリストに乗っ取られた旅客機が世界貿易センタービルに突っ込み、二つのビルが崩壊。逃げまどう市民の姿が連日テレビに映し出された。
あの衝撃映像を見て、心に傷を負った子供は少なくなかった。米国のテレビ局は子供への影響を考慮し、旅客機がビルに突入する映像の放送はすぐに自粛したが、日本のテレビ局にはそうした配慮が足りなかった。
惨事報道における日米の対応に差が出たのは、テレビの暴力シーンについての研究の歴史の違いによるものだろう。
銃の所持が認められていることもあり、ジョン・F・ケネディ大統領、マーティン・ルーサー・キング牧師、ロバート・ケネディ上院議員などの暗殺事件が続いたことから、米国では早くから暴力映像が青少年に与える影響についての研究が行われてきた。
1972年には、連邦議会は報告書「テレビと子供の成長」の中で、「暴力描写を視聴することで、子供の攻撃的な態度が増える傾向がある」と発表。米心理学会も92年、「マスメディアの暴力シーンの影響は攻撃的な行動や態度を引き起こす」と警告した。
日本では小児科学会が2004年、「乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です」と題した提言を行った。懸念されたのは言語発達や社会性の遅れで、米国のように、暴力映像と暴力・攻撃性との関連からではなかったが、幼児期のテレビの見過ぎについては注意喚起が行われている。
20世紀は「映像の世紀」と言われた。スマホが普及し、誰もが動画撮影できて、それをいつでもどこでも視聴できる今は、暴力映像の影響力は前世紀の比ではない。
安倍元首相銃撃事件以前でも、ロシアのウクライナ侵攻により残虐映像に触れる機会は増えていた。特に、ネット上には戦闘映像だけでなく、ロシア兵がウクライナの民間人を射殺する動画までアップされている。
目白大学の重村淳教授(災害精神医学)らは今年3月に発表した「惨事報道の視聴とメンタルヘルス」で、「ウクライナ侵攻はテレビやSNSなどのメディアで連日報道され、現地の惨状、人々の怒り・恐怖・悲しみがリアルタイムで伝えられている」として、「同じ内容の惨事報道を繰り返し見ないように」などと注意を促した。
特に子供は大人よりも不安が強くなりやすいので、大人が管理して衝撃的な内容が目に触れないようにすることを呼び掛けている。
しかも現在は、情報端末が個人所有となって情報過多が加速する一方で、現実の人間関係が希薄になり、SNSで発信される情報が受け手の感情に与える影響力は大きくなっている。
内容が誇張・歪曲(わいきょく)されている場合も少なくないから、問題はさらに深刻である。山上徹也容疑者は、孤独な中で偏った情報に繰り返し触れることの危険性を極端な形で示したのではないか