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国営TVが、息子を亡くした老夫婦を祝う——。こんな信じられない一場面がロシアで発生した。

ロシア国営TVの「ロシア1」が7月17日、ウクライナ戦争で息子を亡くしたロシア人夫婦を祝う内容の番組を放送して物議を醸している。ロシアの独立メディア「メデューサ」が報じた。

ロシアでは戦争で死亡した兵士に対し、見舞金が支給される。その一部を使い、遺族である老夫婦が新車を購入できたという内容だ。見舞金は俗に「棺桶代」と呼ばれている。

番組では、死亡した兵士がウクライナ侵攻の口実として利用されている「ファシズム」と戦ったとして称え、遺族が息子の「棺桶代」のおかげで新車を買えたと祝福している。

放送内容は、ロシア国内でもひんしゅくを買った模様だ。国営のニュース番組配信サイト「Smotrim.ru」にアップロードされたバージョンでは番組が再編集され、この一件を削除した形で配信されている。

「こんなことがあるのか?」欧米から批判殺到
放送に関して欧米の記者やメディアは、信じられないといった反応を一様に示している。

英BBCのフランシス・スカー記者は自身のTwitterを更新し、「こんなことがあるだろうか? 昨夜ロシア国営TVは、息子がウクライナで殺されることによる予想外の『メリット』を放送した」と述べた。ツイートは大きな注目を集め、2万7000の「いいね」が集まり、2000回以上リツイートされている。

あるユーザーはリツイートのなかで、「#Russia は精神的に錯乱している。『息子よ粉々になってくれてありがとう、おかげで新車のラーダが買えたよ』」と述べ、放送内容の異常さを強調した。

アメリカのインサイダー誌も一件を取り上げ、ウクライナ戦争で息子を亡くした遺族夫婦が政府からの支給金で新車を購入するという「奇妙な一幕」が放送されたと報じた。

父親は「息子の思い出に」と説明
夫婦に支給された見舞金の総額は報じられていない。英テレグラフ紙は、ロシアでの「棺桶代」が一般に、日本円にして2,000万円前後であると報じている。

亡くなったのはロシア軍のアレクセイ・マーロフ二等軍曹で、2月下旬の侵攻から3日目にして戦死を遂げた模様だ。母親はロシア1の取材に対し、息子の死を「少しずつ」受け入れるようになったと述べている。

父親は番組に対し、亡くなった息子がいつか白の車を買おうと夢見ていたことから、「息子の思い出に」新車を買ったと説明している。夫婦が「棺桶代」で購入した自動車は、ロシア自動車メーカー大手のアフトヴァースが製造する「ラーダ」で、色は白だ。

番組のナレーションは、夫婦が真っ先に向かった場所は息子の墓だ、と締めくくっている。

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