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錦江湾で隔てられた鹿児島市街地と桜島(画像:写真AC)

 まさに前代未聞――。7月24日、鹿児島県桜島の噴火警戒レベルが「5」に引き上げられた。最高レベルの5に引き上げられるのは、2007(平成19)年にこの基準が設定されて以来初めてだった(28日に「3」へ引き下げ)。

 一方、桜島の活発な活動によって改めて具体化しそうな計画がある。それは、鹿児島市街地と桜島間の架橋構想だ。

 桜島は市街地から錦江湾(鹿児島湾)で隔てられた場所にあり、24時間運行の桜島フェリーに乗れば、片道15分程で到着する。この場所に架橋が構想されるのは、鹿児島市と大隅半島とのアクセスが悪いためだ。

 現在、鹿児島市と大隅半島をつなぐ高速道路は、

・東九州自動車道
・大隅縦貫道(高規格道路)

のみとなっている。

 これらの道路は、錦江湾を迂回するルートで建設されているため、双方のアクセスは良好ではない。鹿児島市から大隅半島の中心都市・鹿屋市へアクセスするには、東九州自動車道から大隅縦貫道へ向かうか、鹿児島市と垂水市を結ぶ鴨池・垂水フェリーを利用するかだ。

 前者の目安は鹿児島IC~鹿屋串良JCT間が約1時間15分、後者は自動車で最短70分程度だ。鹿児島中央駅~鹿屋間の直行バスもこのルートを通り約2時間かかる。なお、利用する人は少ないが、一般道だけを利用した場合には2時間を超える。鹿屋串良JCT~宮崎IC間は1時間22分が目安のため、どのルートを利用しても隣県の県庁所在地に出掛けるのと大差ないのが現状だ。

 そこで計画されているのが「錦江湾横断道路」で、その一部に「桜島大橋」がある。

 鹿児島市街地と桜島の間に橋を求める声は古くからあったが、行政による本格的な検討が行われたのは、2009(平成21)年の鹿児島県による「錦江湾横断交通ネットワーク可能性調査」からだ。

 計画は、錦江湾を横断する交通ネットワークがどのような条件なら実現できるのか、その「可能性」を調査するというものだった。

検討された三つのルート

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鹿児島市街地と桜島の位置関係(画像:(C)Google)

 この調査で鹿児島県が進めたのは、トンネル建設を前提としたものだった。その上で3ルートの検討が行われている。概要を次に記す。

●鹿児島~桜島ルート
・水深40m程度。海上距離2km。施行は可能であると考えられる。
・ルート延長はトンネル6.4km程度。橋梁3.3km程度。
・概算工事費はトンネル1200億円程度。橋梁1300億円程度。

●鹿児島~垂水ルート
・水深180m程度。海上距離14km程度。現時点では施行可能性が極めて低い。

●指宿~根占ルート
・水深100m程度。海上距離8km程度。施行は可能であると考えられる。
・ルート延長はトンネル11.8km程度。橋梁8km程度。
・概算工事費はトンネル2200億円程度。橋梁7800億円程度。

 鹿児島~垂水ルートは論外として、指宿~根占ルートも錦江湾を南から回り込むルートであり時間短縮効果も少ない。そこで、調査では距離も短く需要も見込まれる桜島経由のルートを適当とした。

 ということで、桜島大橋の架橋構想はトンネルと橋を使うものとなるようだ。

 ただ、調査でも触れられているが、このルートは桜島の噴火で影響を受ける可能性がある。この懸念に対しては、鹿児島市街地と船を使わずに直結するルートが完成すれば避難は容易になるなど、防災面の効果があるという意見もある。