宮城県大崎市を拠点に活動するNPO法人「シナイモツゴ郷(さと)の会」が、湖沼の生態系を壊すアメリカザリガニを食べて減らす活動に取り組んでいる。捕獲したザリガニを飲食店に無償提供するほか、スープや春巻きなど多彩なレシピを提案し、ザリガニ料理の普及を図る。捕獲して廃棄するのではなく、消費することが持続可能な駆除活動につながると需要の掘り起こしを図る。

https://kahoku.news/images/2022/07/31/20220731khn000029/001_size3.jpg
南郷高の生徒と一緒に、ザリガニの駆除活動に取り組む高橋理事長(左)=9日、大崎市鹿島台

 郷の会は昨年、大崎市鹿島台の3カ所のため池で、約4万匹のアメリカザリガニを捕獲した。暗い場所を好む習性を利用した駆除装置を3年前に導入し、平均捕獲数が5倍に増えた。
 体長7、8センチある大きめのザリガニは、仙台市の中華料理店「新天地人」に提供する。店は野菜やニンニクなどとの炒め物にして、辛さが人気の麻辣(マーラー)味など5種類を6~11月、200グラム750円で試験販売する。
 郷の会によると、鹿島台のため池は水源地に近く、ザリガニは身に臭みがない。食用ザリガニは輸入の冷凍品が多いが、捕獲して生きたまま店に届くため、鮮度が格段に違うという。
 炒め物だけでなく、むき身で作るチリソースや春巻き、サラダ、スープ、ゼリーなど10種類の料理を開発し、郷の会のホームページでレシピを公開している。
 最近は体長6センチ未満の幼体の調理方法も研究する。幼体は液肥や有機肥料の原料に使われているが、高機能肥料と競合し、思うようには普及しておらず、食べて減らす道を模索する。
 幼体を使った料理のレシピを駆除活動で連携する南郷高(宮城県美里町)に提供。6月12日には校内で試食会があり、生徒が炊き込みご飯とスープに仕立てた。スープは大分県の郷土料理「がん汁」を参考に、幼体をすりつぶして作り「エビと同じ味でおいしい」と好評だった。

https://kahoku.news/images/2022/07/31/20220731khn000029/002_size3.jpg
試験販売されているザリガニとニンニクの炒め料理(郷の会提供)

 郷の会は今後も同校と協力し、ザリガニ料理のレシピ開発を進める。「食材」との認識が広がれば、これまで廃棄するばかりだったザリガニを有効活用でき、継続的な駆除活動にもつながる。販売できるようになれば収入の一部を捕獲費に充てられる。
 高橋清孝理事長(70)は「鹿島台で捕獲したザリガニは安全で、食材として高級感がある。駆除活動を多くの人に知ってもらうためにも、ザリガニ料理の普及に努めたい」と意気込む。

[メモ]シナイモツゴ郷の会は絶滅危惧種の淡水魚「シナイモツゴ」の生息環境の保全を目指し、約20年前に発足。アメリカザリガニはシナイモツゴが産卵する二枚貝を食べる上に繁殖力が強く、継続的な駆除に取り組んでいる。今年5月の法改正で、アメリカザリガニは生態系や農林水産業に影響を及ぼす「特定外来生物」に指定される見通しとなった。駆除団体は許可を得れば販売もできる。北欧やフランス、中国にはさまざまなザリガニ料理がある。国内は流通量が少なく、輸入の冷凍品は500グラム当たり1200円以上の高値が付くとされる。

https://kahoku.news/articles/20220731khn000029.html