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記者会見する沖縄県の玉城デニー知事=那覇市の県庁で2022年8月4日午後0時53分、竹内望撮影

 中国軍が台湾周辺で4日から開始した大規模な軍事演習で、中国軍が発射した弾道ミサイルが演習の対象海域に設定されていた沖縄県の与那国島や波照間(はてるま)島周辺の海域に落下したことが明らかになった。演習はペロシ米下院議長の台湾訪問を受けた対抗措置とみられる。落下海域に近い沖縄県の漁業関係者らからは不安の声が聞かれた。

 日本の最西端で、台湾から約110キロに位置する与那国島。防衛省によると、ミサイルは島の北北西約80キロの日本の排他的経済水域(EEZ)外の海域に落ちた。与那国町漁業協同組合の嵩西(たけにし)茂則組合長(60)は4日夜、「ミサイルが近海に着弾することは全く予想していなかった。予想外の大がかりな演習で、危険だ」と話した。現時点で被害の情報はないが、漁協所属の漁船には5日の漁を中止するよう連絡するという。防衛省から演習の詳しい内容の情報提供はなかったといい、「国の大失態かと思う。国民、特に与那国町民への連絡体制は整えておいてほしかった」と話した。

 町漁協の筆頭理事で、与那国防衛協会副会長の大宜見(おおぎみ)浩利さん(65)によると、ミサイルが落ちた海域周辺は普段から一本釣りなどをしている漁場だという。「我々が漁をしている場所からわずかの距離だ。船の上に落ちてくる可能性もあるし、島が被害を受ける可能性もある。こういう場合には、国は島民に確かな情報と説明をしてほしい」と語った。

 防衛省によると、波照間島(竹富町)周辺のEEZ内の海域にも落下した。島で暮らす会社役員の男性(65)は「ミサイルが落ちたのであれば脅威だが、ニュースでしか内容が分からず不安だ。騒いでもどうしようもないが、避難するべきなのかどうかなど、役場や国がきちんと島民に情報を提供してほしい」と求めた。

 沖縄県の玉城(たまき)デニー知事は4日昼の記者会見で、中国軍の軍事演習について、「(住民は)非常に不安を覚えていると思う。絶対に住民に被害が及ぶことがないよう米中で冷静な外交を行うことを日本政府も申し入れしてほしい」と語った。【竹内望、上村里花、山口桂子】

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