手の指が地面から出ているように見える赤い物。実は、「カエンタケ」という猛毒キノコです。触るだけで炎症が起こり、少しでも食べると、死に至る可能性もあるというキノコです。このカエンタケが、神奈川県の公園など身近な場所で目撃されています。

■過去には死者も…「中毒症状のデパート」

 お盆休み真っただ中の14日。神奈川県相模原市の公園には、多くの家族連れの姿がありました。

 広場の横に広がる大きな林には、毎日訪れる人でさえ気付かない隠れた危険があるといいます。

 土から突き出た真っ赤な棒状の物体。木の根元に沿うように顔を出すその正体は、猛毒キノコのカエンタケです。

 キノコ研究40年以上 大舘一夫さん:「(Q.大きいほう?)いやいや。もっと大きいありますよ」
 
 そう話すのは、野生のキノコを40年以上研究している大舘一夫さん。

 大舘さん:「大きいのは10センチぐらい。火がこう燃え盛っているような(形で)赤いからね。それでカエンタケ」「(Q.危険?)キノコを傷付けたりすると、汁が手を腫れさせたり。(雨で)濡れると、中の物質が染み出すことはあるでしょうから。触らないほうがいいでしょうね」

 触るだけで危険なキノコは、カエンタケ以外にはほとんどないといいます。さらに…。

 大舘さん:「食べたら、危険なキノコ。腹痛、嘔吐(おうと)、下痢。もうちょっと時間が経つと、呼吸困難になったり。これくらいで、人1人は死ぬでしょうね」

 その量、わずか3センチ。死に至らなくても、後遺症が残る場合もあるといいます。

 大舘さん:「皮膚がただれてきたり、髪の毛が抜けちゃったり。本当に中毒症状のデパートみたいな」

 2000年には群馬県で、食用のキノコと勘違いして食べた男性が死亡する事故が起きました。

 亡くなった男性が食べたものと同じ場所に生えていたカエンタケ。一方、生えてきた直後のカエンタケ。同じカエンタケでも、生えてから時間が経つと、色が薄くなってしまうといいます。

 大舘さん:「(Q.(カエンタケを)色で判断するのは、時間が経つと?)そうね。分からなくなっちゃうね」

 色だけでカエンタケかどうか判断するのは、危険だといいます。

■除去周りも…ガスバーナーで3分間“焼く”

 公園職員が行うカエンタケの除去作業に同行しました。

 ここでは、1カ所に3本のカエンタケがありました。どれも小さく、土からわずかに顔を出す程度。通り掛かった散歩客も思わず…。

 散歩していた男性:「ずいぶん小さいなって。これじゃ、触っちゃいます」

 誰かが間違えて触ってしまう前に、直ちに除去作業開始。長いトングで先端をつまみ上げ、そのまま袋の中へ入れます。

 カエンタケを除去しても、木の根元などに菌が残っているため、その周りもガスバーナーで3分間焼き続けます。

 相模原北公園では、先月来園客の通報で、初めてカエンタケを確認。そこから1カ月で発見が相次ぎ、除去した場所は19カ所に上っています。

 取り除いたものを見てみると、表面はツルツルし、先端から少しだけ枝分かれしています。

 大舘さん:「まだ幼菌だから、柔らかいよね」「(Q.どんどん硬くなる?)硬くなりますよ。木みたいに。中は白い」

 断面は細長く、外側は赤色で縁取られています。

 極めて毒性が強いカエンタケ。専門家は、見た目がよく似た別の食用キノコと見間違えるケースが多いと指摘します。

 大舘さん:「よく言われているのは、ベニナギナタタケ。赤い色をしています。ベニっていうくらいだからね。一種類ずつその名前を覚えて、そのキノコが食べられるか、食べられないかを知る。それしかない」

■多く人往来…遊歩道脇“切り株”下にも

 カエンタケは、他の公園でも確認されています。

 東京ドームおよそ6個分の敷地のほとんどが森で覆われている県立座間谷戸山公園。手つかずの自然のなかには、多種多様な野生のキノコがカサを広げています。

 座間谷戸山公園 園長・菅原正士さん:「もっと大きくなると思いますよ、放っておくと」

 このまま放置すると枝分かれを繰り返し、名前の通り炎のような形になるといいます。