「日本三名園」の一つ、岡山後楽園(岡山市北区)の池にウナギが姿を見せ、話題になっている。今春頃から時折、観光客がニシキゴイに与えるエサを目当てに、ニョロリと顔を出すのだ。ただ、池は周囲の川と行き来しやすい構造になっておらず、やって来た経緯ははっきりしていない。(下林瑛典)

https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/08/20220829-OYT1I50114-1.jpg?type=large
沢の池で、色鮮やかなニシキゴイと一緒に泳ぐ黒いウナギ=岡山後楽園提供

 ウナギが確認されたのは、約4万坪の大名庭園の中心にある「沢の池」。岡山城天守閣を借景とした眺めが人気の場所だ。

https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/08/20220829-OYT1I50115-1.jpg?type=large

 岡山県後楽園事務所によると、今年4月、観光客がニシキゴイにエサを与えていると、赤や黄の魚群に黒いウナギを見つけ、園側に知らせた。

 全長40センチほどで、同園職員は「人が集まるエサ場に姿を見せるとは」と驚く。

 謎なのは、どこから来たのかということだ。旭川の中州にある後楽園。上流では稚魚が放流されているが、川と園が水路で結ばれているわけではない。

 同事務所の石井謙次所長(59)は園内に張り巡らされた「曲水」と呼ばれる細い水路に着目する。「沢の池」の水は、別の池を経て旭川に排水されている。その排水路から川の水面までは高さ1メートルほど。石井所長は「大雨で川が増水すれば高低差がなくなることがある。そうした時に入り込み、曲水を泳いでたどり着いたのではないか」と言う。

 「沢の池」に向かうには高さ2・5メートルの「 花交かこう の滝」もあるが、岡山理科大の小林秀司教授(動物分類学)は「ウナギの力なら、難なく 遡上そじょう できる」と指摘する。

 園では4月以降、少なくとも数匹が泳いでいるのを確認している。同事務所では観光客から度々「ウナギがいる池はどこですか」と問い合わせを受けるという。

 園では、吉兆とされるタンチョウを飼育し、定期的に散策させている。石井所長は「会えたら幸運かもしれない。タンチョウのような人気者になってほしい」と話している。

 ◆ 岡山後楽園 =岡山藩主・池田綱政が造らせ、1700年にほぼ完成した。池や茶室が園路や水路で結ばれ、歩きながら景色を眺めることができる回遊式庭園として知られる。綱政が園内でタンチョウを見つけ「吉兆だ」と喜んで和歌を詠んだと伝えられ、現在も8羽が飼育されている。金沢市の兼六園、水戸市の偕楽園とともに「日本三名園」に数えられる。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20220829-OYT1T50155/