原型は第2次世界大戦直後にイギリスで誕生
 2022年9月11日、新型コロナの影響で実施されていなかった三沢基地航空祭が3年ぶりに開催されました。今回の目玉はなんといっても日本初となる最新ステルス戦闘機F-35Aによる12機の大編隊と、日の丸が描かれた自衛隊仕様の「グローバルホーク」無人戦略偵察機の初展示で、ほかにもアメリカ空軍仕様のCV-22「オスプレイ」の展示など、非常に見どころ満載の一般公開イベントでした。

 ただ、そういった目玉展示が多くあるなか、会場の最も西の端に人だかりを作っていた機体がありました。近付いて覗いてみると、あまり見かけないシルエットのナゾ機。実はこれ、非常にレアな機体、NASA(アメリカ航空宇宙局)のWB-57でした。

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三沢基地航空祭で展示されたNASAのWB-57F気象観測機(2022年9月11日、武若雅哉撮影)。

 2022年現在のジェット機とは異なる外観を持つ本機は、いまから70年ほど前の1953(昭和28)年に初飛行したグレン・L・マーティン社(現ロッキード・マーティン)製B-57「キャンベラ」爆撃機がベースの気象観測機です。ただ、B-57自体が、イギリスのイングリッシュ・エレクトリック社で開発された「キャンベラ」爆撃機を原型にした派生型であり、さかのぼると設計開始は第2次世界大戦終結直後の1945(昭和20)年後半にまで行きつくベテラン機です。

 原型のイギリス製「キャンベラ」爆撃機が初飛行したのは1949(昭和24)年5月13日であり、アメリカ空軍仕様のB-57が運用を開始したのは、それから5年後の1954(昭和29)年のこと。ベトナム戦争などで用いられ、マーティン社では各型合わせて計403機を製造しましたが、飛行できる状態で残っているのはNASAが運用する3機のみということです。

 三沢基地航空祭で展示されたのは、そのうちの1機なので、非常にレアな機体だったといえるでしょう。

シークレットゲスト的存在だったNASAの観測機
 そもそも「キャンベラ」爆撃機は、高速で高高度を飛行する戦術爆撃機として設計された機体で、改良型のB-57Bは近接航空支援機として、さらには偵察・電子戦機としてRB-57A/Dという機体なども登場しています。RB-57Aは戦術用の写真偵察機型として生まれたため、用途がハッキリしていた一方、RB-57Dは戦略偵察機として誕生したことから、その運用方法は当時、ほとんど知られていない「ナゾ機」でした。なお、後者はその後、より機密のヴェールに包まれたU-2偵察機やSR-71超音速・高高度戦略偵察機へと置き換えられていきました。

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離陸するWB-57F気象観測機(画像:NASA)。

 15種類以上も派生型が造られたB-57「キャンベラ」ですが、今回三沢に飛来したのは前出したようにNASAが運用するWB-57Fというタイプです。高高度を飛行し天文観測や大気の観測などの研究プログラム飛行を行う一方で、高高度を飛行することで戦場における通信機器の中継基地としての役割も持っているとか。