「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛する」ことを目的に制定された敬老の日。ハッピーマンデーが導入される前までは9月15日が祝日だったが、100歳を迎える長寿者には銀杯が贈呈され、お祝いムードに包まれていた。ところが、近年、年寄りは金食い虫として嫌悪され、ツイッターでは「#老害」でヘイトスピーチの対象ともなっている。

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 賃金は上がらず、税金や物価ばかりは高くなる──。そんな閉塞感漂う日本を象徴するかのように、SNS上では若者たちによる高齢者批判が相次いでいる。

〈老害をボコってもやむなしという法律を作ってくれ。喜んで老害駆除するわ〉

〈老害は怒鳴った瞬間に心肺停止になってほしいです〉

〈毎年、原爆投下の日に広島に現れる老害という名のデモ隊〉

〈国葬反対デモ、参加者が高齢者ばかりでネット民大爆笑wwwww〉

 社会負担に喘ぐ若者たちにとって、諸悪の根源は年金をもらって働かない高齢者。多年にわたって社会につくしてきた敬愛すべき対象ではなく、自民党の杉田水脈議員の言葉ではないが、「生産性がない」という認識なのかもしれない。

 もちろん、ツイッターで罵詈雑言を浴びせているのはごく一部で、こうした差別的な書き込みをしている若者こそ、将来的に「老害」になっている可能性が高い。「いつか来た道、いつか行く道」だ。

「昔は長幼の序があったとか嘆いてもせんないこと」
 とはいえ、敬老の日もヘイトは収まりそうにない。老害を主張する人たちにとって、五輪汚職も幼稚園児の送迎バス置き去りもすべて老害たちが引き起こした事件であり、日本の社会や経済が旧態依然なのもすべて老害たちのせい。若者が声を上げようとしても、「老人の有権者が多いから選挙に行っても変わらない」と諦め顔。

 だが、日本が超高齢社会に突入しているのは事実であるが、今や人口のボリュームゾーンは1748万人の40代、1741万人の50代にシフトしている。団塊の世代を含む70代は1637万人で、選挙をすれば若者に有利な政策に変えることも可能だ。当然ながら、80代の有権者より20代の有権者の方も圧倒的に数は多い。

「人は老いるほど豊かになる」と言ったのは孔子だが、国も高齢者には冷たい仕打ちが多い。極端な例だが、国は1963年から毎年、敬老の日を記念して100歳高齢者に銀杯を贈呈してきた。ところが、有識者から「無駄遣い」の指摘が出ると、銀杯の直径を縮小したり、2016年からは純銀製を銀メッキ(銅、亜鉛、ニッケルの合金)に変更してしまった。

〈めでたさも 中くらいなり おらが春〉

 何だか値踏みをされているような気にもなる。

「いやいや、百寿祝いの銀杯の中身が銀だろうが銅だろうが、どうでもいいじゃありませんか。国が表彰してくれただけでもヨシとしなくてはいけません。そんな細かいことを気にするほど、こちらは人生長くないのです」