長崎ちゃんぽんとはまったく“別モノ”! 滋賀県民のソウルフード「近江ちゃんぽん」
 もちもちの太麺にまろやかなスープ、そしてキャベツやにんじん、もやしなどの野菜がどっさり。時々むしょうに食べたくなる、長崎県の名物麺料理「ちゃんぽん」。

 ちゃんぽんの発祥は明治時代。長崎県に滞在していた中国出身の料理人が、同郷の留学生たちに“安くて栄養のあるものを”という思いで作っていた麺料理が原型だとされています。これがいわゆる「長崎ちゃんぽん」で、しだいに全国へ広がっていきました。

 最近では、北海道や福岡、沖縄などそれぞれの地域ならではの食材や特色を取り入れた「ご当地ちゃんぽん」も登場しています。

 なかでも「近江(おうみ)ちゃんぽん」と呼ばれる、滋賀県のご当地ちゃんぽんは異彩を放っています。他地域のものとはあきらかに趣向が異なっており、「本家の派生」というよりもはや「滋賀県独自の料理」として進化を遂げているのです。

 2023年に60周年を迎える県民たちに愛される「近江ちゃんぽん」を県内中心に店舗展開する『ちゃんぽん亭総本家』。運営元の「ドリームフーズ株式会社」(本社:滋賀県彦根市)の浦上さんに、誕生秘話などくわしい話を聞きました。

 近江ちゃんぽんにおける最大の特徴。それは「ルーツである長崎ちゃんぽんのおもかげが無い」ところ。

  長崎ちゃんぽんを思い出してみましょう。「鶏・豚骨ベースの白濁スープ」「太麺」「魚介、豚肉、野菜などたっぷりの具」がベーシックなスタイルです。

 いっぽう近江ちゃんぽんはというと……。

「スープは和風しょうゆ味。当店のレシピでは、北海道産昆布・6種類の削り節・近江鶏の鶏ガラなどの素材をていねいにじっくりと炊きだした『究極の黄金だし』を、たっぷり野菜のブイヨンで仕上げています。麺ですが、長崎は唐灰汁を使った『ちゃんぽん麺』に対し、近江はかんすいを使った『中華麺』。具もスープのうまみを際立たせるため、海老やイカなどの海鮮は使わず豚肉と野菜オンリーにしています」(浦上さん)

https://encrypted-tbn1.gstatic.com/images?q=tbn:ANd9GcTmFLvEd06Tgg9qwip82tHwI4NuPExHcirFJy4EqErUTxkFp-QnLvfhdTY

 一般的にちゃんぽんといえば、コク深くまったりとした白湯(ぱいたん)スープのイメージ。ですが、近江ちゃんぽんはすっきりとした京風だしベースのスープで、さっぱりと滋味深い味わいが特徴。麺は自家製の中太中華麺を使用し、こだわりぬいたスープがじつによく絡みます!

“あっさり系ちゃんぽん”誕生のきっかけは、同店の前身である1963年創業の『麺類をかべ』という、麺料理をメインとした食堂でした。

「麺料理を作っていて感じていたのは、栄養バランスのかたより。『もっと野菜を摂れるヘルシーなメニューを食べてもらいたい』とずっと考えていたんです。そこで、京滋(けいじ)エリアの彦根では主流のかつお節や昆布から取った“京風だし”をアレンジしたスープでたっぷりの野菜・豚肉などの具を煮込み、中華麺をあわせたものを提供してみました。なんと、これが予想をはるかに超える大ヒットメニューに」(浦上さん)