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壮行会を前に、軍服やブーツなどを受け取る徴兵された若者たち。「徴兵逃れ」が横行している=2011年5月、モスクワの軍施設、関根和弘撮影

ウクライナ侵攻をめぐってロシアが北朝鮮から武器を調達しているとの情報が駆け巡った。ロシアはソ連崩壊後、北朝鮮との軍事協力をしない方針を貫いてきたが、非公式には北朝鮮人がロシアのために兵士として戦闘行為に参加した、という証言がある。北朝鮮を脱出した知人男性の話を紹介する。(牧野愛博)

ウクライナのメディアは今年春、ロシアのショイグ国防相が中国と北朝鮮を歴訪し、両国にミサイルなどの兵器支援を求めたと伝えた。

日本でも、ウクライナ関係者が各国外交団に「ウクライナの情報機関が得た情報」としてこの話を広めていた。

中国側は「完全なフェイクニュースだ」として否定している。日韓両政府も、ロシアが北朝鮮に軍事支援を求めた形跡はないとしている。

北朝鮮はかつて、ベトナム戦争の際に空軍部隊を派遣したことがあるが、ロシアに対する軍事支援の歴史はないようだ。

だが、今年5月、ソウルで久しぶりに再会した脱北者の知人男性は、ソジュ(焼酎)のグラスを傾けながら、ウクライナ侵攻で苦戦ぶりが伝えられるロシア軍について、こう言った。「ロシア兵はだらしがない」

ソジュをあおりながら彼はさらに話を続けた。

「(かつて)ロシアのために戦った北朝鮮人はいる。カネのためだったがね」

「義勇兵か何かか」と尋ねると、その北朝鮮人は「ロシアに外貨稼ぎに出かけた海外派遣労働者だ」(脱北者の知人)という。

話は少しそれるが、ロシアで出稼ぎする北朝鮮人について説明したい。

2016年に電話取材したロシア・エカテリンブルクで働く北朝鮮労働者によれば、派遣期間は3~4年。500ドル(約7万円)を国家に納めれば、さらに3年ほど延長できる。

この労働者は建設作業やタイル貼りなどに従事していた。仕事があれば、朝8時ごろから夜12時くらいまで働くという。

休みは月1回程度。年収は60万ルーブル(約140万円)。半分は国家に納め、食費や家賃などを引かれると、20万ルーブル(約47万円)くらいだったという。

北朝鮮の海外派遣労働者はノルマを果たすと、同行している党秘書や国家保衛省(秘密警察)幹部らに賄賂を払い、アルバイトをしている。

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ロシア極東のウラジオストク空港に到着した北朝鮮の関係者=2019年4月、竹花徹朗撮影