韓国の少子化が異様な速度で進んでいる。「韓国経済は間もなく日本を追い越す」「実質では既に追い越している」といった妄想を振りまく学者が韓国にも日本にもいる。彼らの視界には「異様な少子化」が入っていないのだろうか。「国滅びて山河あり」ならともかく、「民消えて富国あり」ではお笑いだ。

韓国の2021年の合計特殊出生率(=1人の女性が生涯に産む子どもの推定数。以下、出生率)は0・81で、前年より0・03低下した。出生率が1・0を下回っている国は、世界中で韓国だけだ。韓国の先行指標となるソウル市の21年の出生率は0・63だった。

こうした状況の中で、新生児に占める双生児の比率が上昇している。

1990年代は1%台で、世界平均と同じ水準だった。それが2002年には2%台、12年には3%台、18年には4%台と上昇し、21年は5・4%になった。日本のほぼ4倍だ。

双生児出産の比率は、高齢出産と相関がある。不妊治療(体外受精)を受けた出産でも双生児出産の比率が高まる。

朝鮮日報(22年8月30日)が韓国統計庁の資料を引用して報じたところでは、母親が24歳以下の場合、双生児出産の比率は2・1%だ。ところが35―39歳では8・1%に高まる。21年に出産した女性の平均年齢は33・4歳だった。

韓国の大卒男子の平均就職年齢は30歳前後だ。兵役の他に、アルバイト留年があるし、卒業後の就職浪人はほぼ既定のコースだからだ。それで「30歳の新入社員」が普通の存在になる。

彼らが金銭的なゆとりができてから、ほぼ同じ年代の女性と結婚すれば高齢出産が多くなるのは当然。全体出生率の下落と、双生児出産率の上昇は矛盾してはいない。

朴槿恵(パク・クネ)政権下の15年、出生率は1・24で、日本の現状より若干低いレベルだった。政権の移行期、韓国人ジャーナリストから「左派政権は少子化対策に熱心でなかった。おそらく文在寅(ムン・ジェイン)政権も…」と聞いた。その通りだった。

文政権下の17年は1・05となり、それ以降は沈む一方だった。22年4―6月期の出生率は0・78まで低下した。折れ線グラフを見ると「秋の日はつるべ落とし」ということわざが浮かんでくる。

尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領はどうか。今のところ、目を引くような少子化対策を出していない。自らが「晩婚・子供なし夫婦」とあっては、「産めよ、増やせ」式の号令は掛けにくいのだろうか。

「韓国の右翼サイト」とされるイルベの書き込みを見ると、「少子化の危機」を憂慮する意見よりも、「そもそも韓国の人口は多すぎる」「今の半分(2500万人)が適正規模だ」といった投稿が目立つ。

通貨ウォンの下落はいずれ歯止めが掛かるだろうが、「つるべ落としの少子化」は食い止められないかもしれない。(室谷克実)

https://www.zakzak.co.jp/article/20221006-5W2ACQRWLNKFHD7KGLBEK5VPHU/