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中国の古典に日本の妖怪?
中国の古典『西遊記』は日本でもとても有名ですね。本編を読んだことがなくても、子供の頃に粗筋だけでも見聞きしたことがある人や、例の実写ドラマでよく見知っているという人も多いでしょう。

しかしそれだけに気付きにくい、不自然な点があります。日本で翻訳されてきた『西遊記』に登場する沙悟浄というキャラクターは「河童」として描かれていますが、考えてみると河童は日本の妖怪であり、中国にはいないんですよね。

では、本家本元の『西遊記』では、沙悟浄はどんなキャラクターとして描かれているのでしょうか? そして、なぜ沙悟浄は「河童」として描かれるようになったのでしょうか?

まず、原作の沙悟浄がどのように描写されているかを見て行きましょう。彼は外見については単に「妖怪」「気味の悪い男」「気色悪い男」としか記されておらず、何かをモチーフとしたキャラクターという訳ではありません。

特徴と言えば、青や黒に近い顔色と、ふわふわの髪で頭頂部は剃っているといった風貌くらいしかありません。孫悟空の「猿」、猪八戒の「豚」と比べると、何だか曖昧な感じがして想像しにくいところがあります。

沙悟浄とは何者か
そもそも、沙悟浄とはどういう素性のキャラクターなのでしょうか。少しおさらいしましょう。

実は、彼は過去に、『西遊記』の主人公である三蔵法師を9回も殺害しています。何を言っているのか分からないと思いますがこれは本当のことで、沙悟浄は首に三蔵法師の髑髏を9つぶら下げているのです。

もともと彼は「捲簾大将(けんれんたいしょう)」(天帝の近衛兵の大将)という天の役人でした。しかし天帝の大事にしていた皿をうっかり割ってしまい、鞭打ち800回の罰を受けた上に姿も醜く変えられて地上へと追放され、砂漠のど真ん中の「流沙河(りゅうさが)」に落とされました。

彼はやむを得ずそこに住み着きますが、飢えに耐えられなくなると、地上に出て人を食べるようになります。

さて、三蔵法師は、はるか西の天竺(インド)に仏教の経典を求めて旅をしていました。が、いつも沙悟浄に食べられ、転生してまた旅をしては食べられるということを9回繰り返していました。

しかし10回目に三蔵法師と沙悟浄が遭遇する前に、沙悟浄は観音菩薩から諭されて「三蔵法師という僧侶にお供せよ」と命じられます。

で、次に出会った時には孫悟空や猪八戒にやり込められたこともあり、三蔵法師についていくことになったのです。