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「本当に血のつながった親子なのか?」という疑問は、親子同士の血縁や作物・家畜等の品種を特定することにも用いられるDNA型鑑定で解決することができます。2022年11月にワシントンDCで開催されたDNA型鑑定に関する国際シンポジウムで発表された事例では、ある少女が母親とのDNA型鑑定を行った結果、少女の母親が実際には母親ではなく「男性の遺伝子を持っていた」という衝撃の事実が明らかになっています。

コロンビアの遺伝学研究所のファン・ユニス氏が報告した症例では、ある少女がDNA型鑑定を行った結果、三つの結果が明らかになりました。まず、少女の生みの母親は実際に母親ではないという検査結果。第二に、いくつかの検査で判明した事実を重ね合わせると、父親も彼女の本当の父親ではないと示唆されました。そして最後に、生みの母親の血液サンプルには女性に関与する「XX染色体」ではなく、生物学的男性に見られる「XY染色体」が含まれていたそうです。

ユニス氏によると、検査の結果を受けて「誰かがミスを犯して、実験室が汚染されました。検査を今すぐ止めるべきです」と混乱が巻き起こった一方で、元の血液サンプルでテストを繰り返したところ、同じ結果が得られたとのこと。また、母親をテストから外して、父親と少女の2人だけを検査したところ、父親は明らかに少女の父親であることが示され、さらなる混乱を引き起こしました。

この医学的謎について、ユニス氏は「母親のDNAの中で、姿を消した双子の兄弟の遺伝子が生き続けています」と解説し、それはDNA的に「人間のキメラ」であると述べています。母親のバニシングツインがDNAとして残っており、少女の「叔父」である消えた双子の遺伝子がDNA型鑑定で検出されたことで、鑑定結果に混乱が生じたというわけ。

遺伝子研究はここ数十年で新しい見解が開かれており、精子が卵子と出会って赤ちゃんが誕生するまでの間、初期の数週間は胚の細胞が急速に発達する中で、複雑な「DNAシャッフル」が起きていることが明らかになっています。このDNAシャッフルによる調整で、三つ子が生まれたり流産になってしまったりと結果が左右されますが、そのような経路と結果が「キメラ現象」につながる可能性が考えられています。すなわち、DNAシャッフルの過程で存在した「後に消滅する双子」のDNAが、最終的に誕生した兄弟のDNAと混ざり合い、外部に現れないDNAの奥底の情報として残ってしまいます。

ユニス氏は2002年にも、カレン・ケーガン氏という52歳の女性が臓器移植のために遺伝子検査を行ったところ、彼女が「テトラガメティック」のキメラであったという、類似したケースを報告しています。ケーガン氏は、通常は遺伝子に二つしかない性細胞を四つ持っていることが確認されましたが、これも「母親の妊娠初期に受精卵が融合したため」と考えられています。ケーガン氏は2種類の「XX細胞」を持っていましたが、ユニス氏が新しく報告した女性については、妊娠初期に姿を消した双子の男性の名残で、「XX細胞」と「XY細胞」を持ち合わせていたそうです。

アメリカ東部のボルチモアに本拠を置く遺伝子病理学者のロバート・ウェン氏は「キメリズム、すなわち生まれながらキメラ細胞を持つ事例はほとんど発表されていませんが、人口の最大10%にこの状態が存在する可能性があると推定されています」と述べています。これは、「妊娠初期には15%から30%が双子と確認されて、1人の子どもとして誕生する」という「消失双生児症候群」に関する調査が示唆しています。