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ドニエプル川東岸とみられる地域の鉄塔に掲げられたウクライナ国旗=通信アプリ「テレグラム」から

 ウクライナ南部ヘルソン州でウクライナ軍の一部部隊がドニエプル川を渡り、ロシア軍が支配する東岸地域に上陸し、ウクライナ国旗を掲げたとする動画が流されている。ロシア軍はドニエプル川を実質的な防衛ラインとしているが、ウクライナ側が東岸地域への攻撃に着手した可能性がある。

 通信アプリ「テレグラム」に3日投稿された動画には、ウクライナの特殊部隊が数隻の小型ボートでドニエプル川とみられる河川を渡る様子や、鉄塔に掲げられたウクライナ国旗が映されている。

 2月下旬にウクライナ侵攻を始めたロシア軍は早い段階でヘルソン州の広域を占拠したが、秋以降は苦戦が続き、11月半ばにドニエプル川東岸地域に撤収し、防衛体制を固めてきた。米国のシンクタンク、戦争研究所は3日発表した情勢分析で、今回の動画の内容について「事実ならば、ウクライナ軍が東岸地域で攻撃を始める糸口になるかもしれない」と指摘している。

 一方、ロシア軍はドニエプル川西岸地域への攻撃を続けており、ヘルソン市評議会によると、今月4日までの2週間で民間人19人が死亡し、39人が負傷したという。ロシア軍が撤収する際に電気や水道のインフラを破壊したと伝えられたが、ヘルソン州幹部は4日の時点で85%の住民に電気が、70%の住民に水が供給されるようになったと説明している。

 長引くロシアとの戦闘について、ウクライナのゼレンスキー大統領は4日のビデオ演説で「ロシアはミサイルや火砲(の数)で優位に立つが、我々は侵略者が持たず、今後も持ち得ないものを持っている。祖国を守っているということであり、それが強い動機を与えている」と国民を鼓舞した。【大前仁】

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