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ウクライナ東部のバフムートで戦うアンドレイ中尉(右から2人目)ら=11月、本人によるテレグラムへの投稿より

ウクライナ東部ドンバス地方にある平原の町バフムートを「陥落せよ」と、ロシアの指導部が軍に厳命している。激戦は5カ月以上続く。現在、この前線にいる元国会議員のウクライナ軍将校、アンドレイ中尉(35)がオンラインによるインタビューに応じた。彼が語る最前線の壮絶な戦いとは――。(キーウ=岡野直)

――ドンバスの親ロシア派武装勢力が11月28日、「バフムートの包囲が近い」と述べたが、その可能性は?

今、ロシアが狙っているのは、バフムート市周辺の村落に陣地を築き、バフムート市を包囲することです。

ロシア軍がある地点で数百メートル前進したりすることはあり、ロシアはそれを、あたかも大戦果のように宣伝しますが、「ロシアがバフムートを包囲しそうだ」という状況では全くありません。今後もないでしょう。

バフムート市内は完全にウクライナ軍がコントロールしており、周辺の村落でもロシアの攻撃を撃退しています。しかし、非常に厳しい戦いです。

――ゼレンスキー大統領が最近、バフムートについて、「最もホットで、痛ましい戦いが行われている場所」と述べた。何が困難なのか。

塹壕戦です。第1次世界大戦に似ています。互いに塹壕を掘って、陣地をつくり、そこを歩兵が守る。それを砲弾で攻撃しあう戦いです。砲弾の量が多い。大砲で撃ちあう砲撃戦が、戦いの9割を占めています。

ロシアの砲撃は目標を定めず、めったやたらと広い地域に撃ち込むのが特徴です。第1次大戦との違いは、ドローンの使用。互いに空から攻撃目標を探っています。

もちろん、ロシアもドローンは使うし、効果的な兵器を十分に持っています。どこかの第3世界の弱い軍隊とではなく、強力な軍隊と我々は戦っているのです。

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バフムートとされる写真。何かが燃えているような煙が上がっている=アンドレイ中尉のFacebook投稿より

――けが人が多いのか。

私の所属する大隊では120人が死傷しましたが、地面がドロドロなので、車両でけが人を運びだすことができない場合があります。

ひざまで泥につかりながら、けがした兵士を別の兵隊が肩にかついで歩いて2キロ離れた救護所まで運んだこともありました。

――バフムートの周辺は森林がほとんどない平原地帯。西側では、戦車どうしが動き回り、撃ちあう「戦車中心の戦い」が起きるとの見方もあったが。

第2次世界大戦では、戦車は敵の前線を最初に突破し、その後歩兵が続きました。ここでは全く違い、ロシア軍の戦車は最前線から1~2キロ離れた場所に陣取って、彼らの歩兵の動きに応じ、遠くから援護射撃を行います。

わが方の塹壕めがけてロシアの戦車が突進してきたなら、ジャベリンなど対戦車ミサイルの餌食になります。

今は、対戦車兵器が豊富なので、9割がた、戦車が最初に突進してくることはありません。

――では、どのようにロシア軍は攻撃してくるのか。

夜になると、ロシアの歩兵が15~25人のグループで、我々の塹壕に近づき、攻撃をしかけます。それが1日数回あります。それを撃退する。