12/25(日) 13:00 読売新聞オンライン
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専門家「推奨できる結果とは言えず」
 2020年8月、大阪府の吉村洋文知事の発言を機に、各地で市販のうがい薬が姿を消した。新型コロナウイルス対策に有効かのように発表し、使用を推奨した一件だ。物議を醸した効果について当時、吉村知事が期待を表明していた研究が最近、ひっそりと終了した。あの騒動から得られる教訓とは何だったのか。(辻田秀樹)

途中段階で会見
記者会見でうがい薬の使用を勧める大阪府の吉村知事(2020年8月4日、大阪市中央区で)

 「うそみたいな本当の話」

 吉村知事は8月4日の記者会見でこう切り出し、「コロナに効くのではないかという研究結果が出た」と述べた。

記者会見直後、各地の薬局でうがい薬が売り切れになった(2020年8月4日)

 軽症の感染者が、ポビドンヨード入りうがい薬を使ったところ、唾液からウイルスが検出されにくくなったと紹介。〈1〉発熱などの症状のある人とその家族〈2〉接待を伴う飲食店の従業員〈3〉医療や介護の従事者――に使用を求めた。

 当時は感染拡大「第2波」の真っただ中。会見はテレビ中継されており、うがい薬を買い求める人が相次いだ。「感染を予防できる」と受け止めた人は多く、吉村知事は翌日、「予防効果があるとは言っていない」と火消しに追われた。

 専門家から特に疑問視されたのは、研究の途中段階で効果を強調した発信方法だ。推奨した根拠は「大阪府立病院機構大阪はびきの医療センター」の初期段階のデータで、わずか41人の症例だった。

積極公表せず
 では、最終的にどんな研究結果が出たのか。

 今年11月末、同センターのチームの論文が科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。

 同センターは20年11月〜21年3月、軽症や無症状の陽性者430人に調査を実施。うがい薬を1日4回使うグループと、同じ頻度で水でうがいをするグループに分け、唾液のPCR検査をした。その結果、療養5日目に陰性となった人の割合は、うがい薬が34・5%、水うがいが21・4%だった。

 確かにすでに感染した人の喉からウイルスを減らす一定の効果は示された。だが「コロナに効く」と言えるかどうかは別問題だ。

 そもそも今回のような効果は、インフルエンザやSARS(重症急性呼吸器症候群)でもあるとされている。専門家の間では、新型コロナでも確認されるのは想定の範囲内だった。