スクナビコナ
スクナビコナとは小さな男の神といった意味ですが、本当に小さな小さな神様でした。『古事記』の記述によれば、オオクニヌシの前に現れた時、蛾が の衣を着て、ガガイモ(蔓性の多年草)の実の舟に乗っていたそうです。誰もこの神様の名前も素性も知りませんでしたので、もの知りのクエビコ(久延毘古、案山子のこと)に尋ねてみますと、カミムスヒ(神産巣日神)の子のスクナビコナだとわかりました。そこでカミムスヒに確かめますと、確かに自分の子だといいます。指の間からこぼれ落ちたのだそうです。

『古事記』ではこの話の後すぐにスクナビコナが常世の国*に去ってしまい、その活躍は語られませんが、『日本書紀』にはオオクニヌシと協力して国土を開発したこと、医薬のことを広めたことなどが記されています。また、出雲国・播磨国・伊予国などの「風土記にはオオクニヌシとともに各地を巡ったことが記されています。そのなかには「大便をせずに遠くまで行くのと、粘土を抱えて遠くまで行くのでは、どちらが遠くまで行けるか」を競い合ったという笑い話のような神話もあります。

こうしたことは、オオクニヌシとスクナビコナの信仰が、広い地域のさまざまな階層に広まっていたことを示すものと思われます。また、酒の神としての信仰もあり、『古事記』には神功皇后(第40項参照)が詠んだ「この酒は私がつくったものではなく、常世の国におられるスクナビコナが褒め称えて贈ってこられたもの、残さず飲むべし」といった意味の歌が載せられています。

つづき https://love-spo.com/books/zinzya_026_02.html