ネットや電話で注文すれば、自宅まで食事を届けてくれるフードデリバリーサービス。受け取る側にとっては雨の日や台風、雪などの悪天候な日に外出せずに済むので、とてもありがたいサービスだが、客先に届けるデリバリー側の声はフィーチャーされにくい。

 ウーバーイーツなどのデリバリーサービスは、業務委託の配達員が自らの意志で配達を請け負っているが、店舗のデリバリー担当は天候に関係なく配達しなければならず、選択の余地がない。そのため、台風や雪の時期になると「悪天候の日にデリバリーを頼むのは非常識か否か」という論争がネット上で繰り広げられることも。そこで今回は、飲食店でデリバリーを担当していた人々に、その本音を聞いてみた。

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天候が悪い日の配達時間は大目に見てほしい
 以前、ピザチェーンの配達や、個人経営飲食店で出前を担当していた三上達也さん(仮名)は、天候が悪い日の配達については「仕事だと割り切っていた」と語る。

「注文がゼロだと店側も困るので、非常識とまでは思わないです。雨の日は注文も増えて忙しく、1日があっという間に終わるのであまり気にしたことはないですね。ただ、悪天候の日は道が渋滞しやすいので、遅くなるとクレームが入るかも、とヒヤヒヤした記憶はあります」

 天候の悪さは配達にも影響を及ぼす。配達時間は大目に見てほしい、と三上さん。

「悪天候の日に限らず、夏は酷暑でヘルメットが蒸れてすごく暑いし、冬はめちゃくちゃ寒い。自由な時間も多いですが、労働環境だけで考えたら大変な面はありますよね。それと、自分はそれほど長い期間デリバリーの仕事をしていたわけではなく、台風の日の稼働も数回。担当場所も都心だったので範囲も狭く、環境にも恵まれていました。雪が多い地域や、長年デリバリーをしている人とは状況が違うので、意見も変わるかもしれませんね」

店舗側の「注文しないでください」アピール
 そこで次に話を聞いたのは、YouTubeチャンネル「ばかハサ!」でリーダーを務めているノムラさん。彼は、大学時代に大手ピザチェーン店でデリバリーを担当し、4年間客先にピザを運び続ける“ピザ戦士”だったという。

「台風の日にピザのデリバリーを頼む客は非常識だと思います。最近は強い台風が来るとなれば店を開けない場合もありますが、世間的にそれほど危険視されていない台風は通常営業。でも、台風には変わりないので、運ぶ側は身の危険を感じるしキツいです。

 じつは、悪天候の日はお待たせ時間を180分に設定して、店側も遠回しに『注文しないでくださいアピール』をしたりもしていますが、注文は入ります。だいたい台風の日は30件前後、雪の日でも20件前後の注文が入る。超悪天候の日にオーダーするのは、正直、やめてほしいと思っていましたね」

 やはり台風は、普通の雨の日とは状況が大きく異なるという。天候が悪い日は「配達が遅れる」「商品が濡れるリスクあり」「デリバリーが事故に遭ってピザが届かない可能性がある」など、客にとってもデメリットだらけ、とノムラさん。

「台風の日に死ぬ思いでピザを配達したのに『雨でピザがビショビショになっていた』というクレームが入ったときはがっくりきました。ある時は、サイドメニューのポテトが風に飛ばされたこともあります。また、事故についても珍しくありません。とくに雪の日の翌日は、路面が凍結していてバイクが転倒しやすく、事故に遭いやすい。そうなれば、配達どころではなくなりますよね」

 ノムラさんは激しい雨に打たれて配達しながら「2時間待つくらいなら、自炊したほうがいいのでは?」と感じていたそうだ。

つづき
https://bunshun.jp/articles/-/59643