2/5(日) 15:00    テレ朝NEWS
https://news.yahoo.co.jp/articles/f87e364fd14794e818bbdd949a7c4ce21b4e2bf5

のどかな農地が広がる、千葉県匝瑳市飯塚地区。農地の上には、大量のソーラーパネルが設置されています。かつては、「過疎化」「不法投棄」「耕作放棄地問題」など、様々な問題を抱えていました。それらを解決するために始めたのが、「ソーラーシェアリング」。なぜ地域に活気を取り戻せたのか、追跡しました。

■「農業」&「電気」の二毛作

東京からおよそ70キロ、千葉県北東部の匝瑳市。のどかな風景の中、突然現れたのはソーラーパネルです。

この地域には、およそ2万4000枚ものソーラーパネルがあります。その下には農作物。ここは日本でも最大の規模を誇る、ソーラーシェアリングの郷なのです。

地元で代々農家を続けている椿茂雄さん(71)を訪ねました。

この日は、待ちに待った収穫の日。半年かけて育てた大豆を次々と刈り取っていきます。地上3メートルの位置にパネルがあり、コンバインも難なく動かすことができます。

椿さん:「(Q.とれたての大豆どうですか?)感無量ですね」

椿さんが暮らす地区の場合、40年前には数十軒の専業農家がいたそうですが、その後、高齢化で4軒にまで減少しました。

農業で生計を立てるのは大変だったといいます。

椿さん:「大豆・麦だけでは採算が合わない。だから、『やらないほうがいいね』とやる人が誰もいない」

そうした深刻な状況のなか、9年前、ソーラーシェアリングを知った椿さんは、いち早く導入することにしました。

設置費用は、運営・管理する会社が負担。農家は、初期費用をかけることなく、耕作地の上にソーラーパネルを設置するだけで、毎年収入が入ります。

椿さん:「雨が多くて不作だったとしても、(収入が)しっかりと保証されるので安心して農業ができる」

1ヘクタールの農地の場合、大豆を栽培すると、売り上げは30万円ほどといいますが、もし不作でも、売電収入から年間50万円ほど決まったお金が入る仕組みです。

つまりこの耕作地では、農業と電気の二毛作を行っているのです。

椿さん:「(収入の)ベースがあるので、自分たちがやりたい農業に挑戦できる」

■地域活性化に「売電収入は年間3億円」

安定した収入を得られるようになったことで、自慢の大豆で新たにノンカフェインの大豆コーヒーや味噌を作り販売しています。

また、高齢化が進み、後継者不足に悩む農家にとってソーラーシェアリングは、希望の光だといいます。

大豆農家:「地域の農業の活性化には役立っている」

沖縄から移住・天久笑さん(44):「長い間、農業で働いていける安心感がある」

今までこの地域に、およそ60人が移住し、耕作放棄地が次々と復活。不法投棄の問題も解決したといいます。

地元の人たちとタッグを組み、この地域の再生に貢献しているのが、ソーラーシェアリングを管理・運営している東光弘さん(57)。匝瑳市に移住し、普及に努めています。

東さん:「(Q.全部合わせると、どのくらいの発電能力がある?)私たちが行っているのは、6000キロワット、6メガ。一般家庭2000世帯分を発電している」「この地域全体で400世帯なので、この地域は自然エネルギー100%でおつりが出ている」「(Q.耕作放棄地だった所がソーラーシェアリングでよみがえってお金は?)全体で売電収入が(年間)3億円。雇用や税金などを含めて年間1億円程度が地元に落ちている」

■非常用電源設備 住民は無料で利用可能

ソーラーパネルがあることで、作物の成長に影響はないのでしょうか?

東さん:「(Q.空が見える)『思ったより明るいね』って」

幅の短いパネルを使い、角度をつけて設置することで、太陽の光を確保しているといいます。

他の地域では、ソーラーパネルの下でお米や栗などを栽培している所もあります。

近年、問題になっているところもあるメガソーラーですが、ソーラーシェアリングの場合は、わざわざ山を切り開く必要はなく、耕作放棄地など眠っている土地をよみがえらせるという、国土が狭い日本に適した取り組みだといいます。