もうすぐ初飛行から半世紀のベストセラー戦闘機
 ジェネラル・ダイナミクス社(現ロッキード・マーティン)が開発した戦闘機F-16「ファイティング・ファルコン」、そのプロトタイプであるYF-16が1974年2月2日に初飛行し、49年が過ぎました。F-16はいまだに生産が続けられ、もうすぐ累計5000機を達成しそうな勢いです。

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アメリカ空軍が現在運用しているF-16Cブロック50/52(画像:アメリカ空軍)。

 F-16の最初のモデルであるA型は1978年からアメリカ空軍へ配備されていますが、その後も多くの改良型が開発され、随時性能も向上していきました。これらF-16は開発国のアメリカ軍だけでなく、世界各国にも輸出されており、現在までに生産された機体数は4600機以上になります。

 メーカーであるロッキード・マーティンの最新資料によれば、現在でも25の国で約3000機の機体が運用されており、これまで生産されたF-16すべての総飛行時間を合わせると1950万時間にも及ぶそうです。

 現役戦闘機のなかではズバ抜けた生産数を誇るベストセラー機となったF-16ですが、最初のプロトタイプであるYF-16は、今の「ファイティング・ファルコン」とは性質が異なる機体でした。

 もともとこの戦闘機は「軽量戦闘機(LWF)」という計画に沿って作られた機体で、そこで求められていたのは空中戦で打ち勝てる高機動性と低コストを兼ね備えた軽戦闘機でした。ジェネラル・ダイナミクスはこの開発計画に対して「モデル401」という機体を提案、これが採用されてアメリカ空軍からYF-16と呼ばれるようになります。

 LWF計画自体は、完成した機体をそのまま採用するとは決まっておらず、YF-16もこの段階では技術を実証するためのデモンストレーター的な機体でした。しかし、YF-16の初飛行後にLWF計画自体が変化して計画名も「空戦戦闘機(ACF)」となり、YF-16はデモンストレーターから実際に軍で採用される新型機へと変貌していくことになります。

同じF-16C/Dでも中身は別モノ
 この計画には当のアメリカ空軍だけでなく、新しい戦闘機を求めていたヨーロッパ諸国、具体的にはベルギー、デンマーク、オランダ、ノルウェーといったNATO(北大西洋条約機構)加盟国も興味を示していました。その結果、デモンストレーターだったYF-16の設計は見直され、量産型モデルのF-16Aでは性能の向上とそれに伴う機体の設計変更がされています。

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現在、YF-16が展示されているバージニア航空宇宙科学センター。もう1機のYF-16は現在テキサスの博物館でレストア中とのこと(布留川 司撮影)。

 F-16AとYF-16の変更点は簡単にいうと機体の大型化でした。F-16Aは機首部分にAN/APG-66レーダーを搭載するために当該部分を延長しており、その影響で機体の全長はYF-16よりも10フィート(約3m)ほど長くなっています。

 また、主翼下に兵器を搭載するステーションを2か所追加するため、主翼面積を約7%拡大。このほかにも細かい改良が施された結果、F-16の機体重量はYF-16よりも約25%増加しました。このようにして、LWF計画当初は軽戦闘機として生まれたものの、その面影は失われていったといえるでしょう。

 その後、完成したF-16は傑作機として生産が増え続け、次々と改良型も作られていきました。最初のモデルは前出の通りA型とそれを複座(ふたり乗り)にしたB型でしたが、1984年には改良型のC型とその複座D型が誕生、さらに2004年にはアラブ首長国連邦(UAE)の資金提供でE型(複座F型)がそれぞれ初飛行しています。さらに輸出国や用途に合わせたカスタマイズモデルも存在しており、イラク空軍向けのF-16IQやアメリカ海軍向けのF-16Nなどが存在しています。

 加えて、各タイプには型番を示すアルファベットのほかに、大規模改修を受けたことを示すブロックナンバーやアルファベットが付いています。例えばアメリカ空軍で運用しているF-16はC型とD型ですが、運用初期のモデルはブロック25なのに対し、2023年時点の現役機はブロック50/52となっており、機体内部の装備品構成や性能は大きく異なっています。