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@redundanton/Twitter

<カメラの前で「ありがとう」と言わされた女性たちだが、撮影が終わるとすぐに毛皮のコートを返却させられてしまった>

ウクライナでの戦闘で死亡したロシア兵の妻らに、補償として毛皮のコートがプレゼントされた。妻たちはプレゼントの関係者が撮影するカメラの前で感謝を述べるが、なんとその直後にコートを返却させられてしまった。

ロシアのソーシャルメディア上で拡散しているその映像を見ると、ロシア占領下にあるウクライナのドネツク州マケエフカで、女性たちが毛皮のコートを手に掲げ持っている。「心から感謝します」と1人の女性が言うと、女性たちが一斉に「ありがとう」と述べた。

映像を撮影したのは、2014年にウクライア・ドンバス地方で親ロシア派武装勢力を率いた著名な軍事ブロガー、イーゴリ・ギルキンと親交のあるエフゲニー・スクリプニクとされる。

スクリプニクは映像の中で、女性たちに向かって「こうした状況で、私たちが1つの家族だと感じているでしょう」と声を掛けた。コートは、毛皮製品メーカーとギルキンの妻が提供したとされていた。

撮影終了後すぐにコートを取り上げられた
ところが、ウクライナ侵攻に反対するロシア団体「フェミニスト反戦抵抗運動」が、映像に映っていた女性の1人に連絡を取ったところ、彼女を含む4人が撮影終了後すぐにコートを取り上げられたと明かした。

同団体のテレグラムチャンネルの投稿によると、女性たちは当初、毛皮のコートは品質が悪いと伝えられ、新しいコートを提供するという約束で一度もらったコートを返却。だがその後、「手違いがあり、コートは他の人たちのためのものだった」と告げられたという。

さらに問題はそれだけではなく、団体が接触した女性が言うには、政府からの贈答品と引き換えに動画制作への参加を求められたのは今回が初めてではないという。

「モスクワから何か持ってきてくれ、動画を撮影するのはよくあることで、私たちはいつもとても感謝している」と女性は話している。つまりこうした映像は、そもそも捏造された「やらせ」である可能性が高いということだ。団体は、動画に登場した女性の中に本物の未亡人が何人いるかは「不明」だとしている。

ウクライナ内務大臣顧問アントン・ゲラシチェンコは、ロシア兵の未亡人にコートが提供された話についてTwitterで取り上げていたが、9日に「進展があった」と投稿した。「未亡人の1人は、撮影後にコートを返却させられたと話した」とゲラシチェンコは記し、「そのシナリオを予測した人は何人いただろう?」と述べた。

ウクライナ政府によると、ロシア兵の死者数は急増している。ウクライナ軍は9日、過去3日間でロシア兵3000人近くが死亡したと発表した。

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