https://p.potaufeu.asahi.com/c9af-p/picture/27407844/28b16bbfbf8588698ee6a418d7d0584f_640px.jpg
東武百貨店池袋店B2フロアの御座候(土屋武之さん提供)

ほかほかの生地の中にあんこが詰まっている円形のあのお菓子。「今川焼き」「大判焼き」「回転焼き」などさまざまな呼び方がありますが、関西、そして兵庫県民540万人は「御座候」(ござそうろう)一択ではないでしょうか。地元紙記者としては呼び名の天下統一の日を待ちわびていますが、まさか東京の地で今川焼きの軍門に下っていたとは…無念でござる。

ご存じでない方のために、御座候とは株式会社御座候(本社、兵庫県姫路市)の主力商品で、円形の型に生地を流し込み、赤あん、白あんを挟んで焼いた和菓子です。「お買い上げ賜りありがたく御座候」の意味を込めたこの商品は、おやつに土産、来客のもてなしに年間約5000万個を売り上げるそうです。北海道・十勝産の小豆を本社工場であんこにして全国の店舗に直送、お客さんの目の前で手焼き。首都圏に百貨店にも出店攻勢をかけています。それなのに…。

https://p.potaufeu.asahi.com/034e-p/picture/27407842/e0f8389b7a84d066b6d9f121eb6b91c1_640px.jpg
御座候2個お買い上げです(土屋武之さん提供)

「「御座候」の東京制圧拠点は、今日も盛況であった。ふふふふ…洗脳されるがよい。………って、なんじゃあ、このレシートの書き方は!!!」と由々しき事態を報告したのは、大阪生まれの鉄道ライター、土屋武之さん。自身のアカウント(@twins_tsuchiya)で公開した御座候の店舗や商品写真の後に示された「TOBU池袋店」のレシートには「今川焼2個」。東武百貨店さん、違います。それは今川焼ではありません、御座候なのです。土屋さんに聞きました。

ーやはり東京では苦戦しているのでしょうか

「私はこのタイプの和菓子はすべて御座候と呼んでいます。関西出身者も多く住んでおり、御座候の名前はかなり知られているのではないのでしょうか。ただ東京都内には3店舗なので、それ以外のお店はおおむね「今川焼き」と呼んでおり、皆さんもそちらの方が親しみがあるはずです」

ー「御座候」を買ったのにレシートに「今川焼」と印字されているのに気づいたときは

「レシートを見た感想は、『あ、やはり関東では今川焼きとしか呼ばないのだな』です。関東系の百貨店のテナントですし、経理上も「今川焼き」の方がわかりやすいのだろうなと。店名の「御座候」と商品名が同じなので、そちらを考慮したのかもしれませんね。関東暮らしも長い(約25年)ので、こちらのやり方にも慣れている部分もあります。郷に入れば郷に従え、です」

地域で呼び名が違うナゾ
大阪ガスのサイト内の「関西のギモン、調べます 炎の探偵社」では調査ファイル95で「御座候?大判焼?地域で違う「回転焼」の呼び名のナゾ」をリサーチしており、回転焼の名称について調査研究したという方言学が専門の奈良大学文学部教授の岸江信介さんの見解を紹介しています。記事では、北海道は「おやき」、首都圏は「今川焼・大判焼が混在」、京都を除く京阪神は「御座候・回転焼が混在」といった勢力図が示されています。